
Necropolisと近づくにつれ、鼻につく臭いがし出した。
Ianがなにやらぶつぶつ文句を言い出した。
Tychoはいつもしているマスクのおかげで苦にはならないようだ。
Ian「Necropolisってキャラバン隊も近寄らない町なんだよな。」
Vesper「へえ?」
Tycho「見ての通りというか、嗅いでの通りと言うか死者の町だ。」
Vesper「この臭いは・・・?」
さすがに俺も溜まらず口と鼻を覆い隠す。
町は瓦礫に覆われ、靄がかかったように薄暗い。
目を凝らすと、遠くに動く影がある。
Vesper「あれは、住人か?」
Tycho「住人と言っていいのならば。」
Vesper「どういう意味だ。」
Dogmeatが激しく吠えたのに気づいたのか、のそりとこちらに向かって影が動き出した。
唸り声をあげて近づいてくるその姿に暫し絶句する。
皮膚がぼろぼろになっている。そして町中に漂う臭い(死臭)は彼らから発せられていた。
Ian「これがグールって訳だ。」
そういうとDogmeatを襲おうとしていたグールの頭を問答無用でぶち抜いた。
Tycho「残念ながら、ここでは俺たちは歓迎されていないようだな。」
Vesper「(ふう)仕方がない。俺たちも進まなくてはならないからな。許せ。」
グールたちを片付けて街中を徘徊するが、建物が崩れて道を塞いでいて先に進めない。
Tychoが足元の下水道穴に気づいて、下を指さす。
Vesper「おい、まさかとは思うが。」
Tycho「背に腹は代えられまい。」
Ian「俺もう鼻がマヒしてきた。」
どう考えても、このままでは先に進めない。持っていた布をスカーフ代わりにして鼻と口を覆う。
Veper「行くしかねぇか・・・。」
うろちょろするネズミどもを倒しつつ、先へ進んでいく。
ところどころにグールの死体も転がっている。
Vesper「なんつー町なんだ。ほんとにここにウォーターチップがあるのか?」
Ian「Water Merchantsのやつは話したって言ってたけど、誰と話したんだろうな?」
Tycho「会話が可能な人物がいるということだな。生きてる人間がどこかに隠れ住んでるのかもしれん。」
Tychoがグールは放射能の影響で今のような姿になってしまったと教えてくれた。
老化が止まり、放射能への耐性を得た代わりに皮膚が腐ったような外見になってしまうという。
ふと、下水道の先に灯りが揺らめくのが見えた。
誰かここで生活しているのか?
???「ま、待ってくれ!撃つんじゃない!」
灯りの中に浮かび上がってきたのは、さっき外で見たグールたちだった。
咄嗟に身構える俺たちに、そのグールは声をかけてきた。
Vesper「・・・喋れるのか?」
Ghoul「まずは撃たないでくれたことに感謝する。何かちからになれるかな?」
IanとTychoに視線を送る。2人とも銃は降ろしたが、すぐに構えることができるように警戒は怠らない。
Vesper「まず、あんたたちは一体なんなんだ?地上のやつらはすぐに襲ってきたぞ。」
Ghoul「地上はSetとその配下のグールが支配している。奴らは水も支配していてな。」
Ian「水?どういうことだ?」
Ghoul「我々だって暮らしていくのに水はいる。町に何かあった時の戦力として使うために、我々に水だけは分けてくれているのだ。」
そこでGhoulはため息をついた。
Ghoul「我々は平和に暮らしたいだけなのに。」
地上を賄い、地下に分けるだけの水があるということか。
Vesper「いったいそんな水量をどうやって確保しているんだ?」
Ghoul「以前はポンプを利用していたんじゃが、故障してしまって。」
Tycho「では、ポンプ以外の手段があるのか。」
Ghoul「地下にある施設から水を手に入れておる。水質浄化のウォーターコンピューターがあるそうじゃ。」
Ian「Vesper、これって。」
どうやら当たりを引いたようだ。
Vesper「その施設にウォーターチップがあるんだな?」
Ghoul「その通りだが・・・ウォーターチップをどうするつもりじゃ?」
Vesper「俺のVaultのウォーターチップが壊れてしまったんだ。」
Ghoulは一瞬にして状況を飲み込んだようだ。
そしてビー玉のような目で俺を見つめる。
Ghoul「ウォーターチップを持って行かれたら、我々全員あの世行きだ。」
Ian「確かに。うーん、ポンプを直したらいいんじゃないか?」
Ghoul「ポンプを修理するための部品はWatershedのどこかに行ってしまった。あの辺は化け物がうようよしておる。」
Vesper「OK、わかった。ポンプを修理する。その代わりウォーターチップは貰っていく。それでいいな?」