クリムゾンキャラバンに戻り、アリス・マクラファティに無事請求書を届けたことを報告する。
アリスはご満悦だった。
更に仕事をしないか?と話を持ち掛けてくる。
『どんなこと?』
「手に入れたいキャラバンがありましてね。交渉してきて欲しいんです。」
「まだキャラバンを手に入れたいと言うのか。」
アルケイドが少しだけ嫌な顔をした。
『えーと、話だけ聞くわ。どこにあるキャラバンなの?』
「キャシディ・キャラバンという小さな商業団体です。予想以上に競争力を持ってきたので買収しようと考えております」
キャシディ・キャラバン・・・?どこかで聞いたことがあるような。
「オーナーのキャスはキャラバン家業を辞めたいと思っていると聞いています。」
モハビ前哨基地にいたキャスのことだ!
・・・キャスと知り合っていることはアリスに伝える必要はないだろう。
どうにも商魂逞しそうな、この女性に信頼を置くことができない。
できる限り表情を変えずに、他にもやって欲しいことはないのかと尋ねるとヘンリー・ジェイミソンという男を辞めさせてくれと頼まれた。
「そんなのアンタが言えばいいんじゃないか。」
「・・・話はそう簡単ではないのです。彼の父親は裕福な牧場主でして。クリムゾン・キャラバンの主要な投資家です。」
『で?』
「その父親からヘンリーを支店長にするよう圧力をかけられました。ヘンリーは全くその器ではありません。」
「ようするに、無能でお荷物な男に絶縁状を叩きつけてこいということか。」
「役立たずに給料を払い続けることほど腹立たしいことはありません。ヘンリーはいつものようにアトッミックラングラーにいるでしょう。」
『・・・。話だけ聞いておくわ。』
アルケイドと2人、黙ったままクリムゾンキャラバンを出てアトミックラングラーへ向かう。
1人スロットに向かって悪態をついている男がいた。どうやらヘンリー・ジェイミソンのようだ。
『あんたがヘンリー・ジェイミソン?』
「ちっ。なんだよ、てめぇのせいでツキが悪くなっちまったじゃねぇか。失せろよ。」
こちらに振り向きもせず、スロットマシンを動かし続けている。
確かに仕事もせずに、ギャンブルに興じているこの男は役立たずと言えそうだ。
クリムゾンキャラバンから雇用契約解除の話が出ていると知らせると、父親から支店長になると言われたことやオメルタに借金があって、そのための金をどうやって稼ぐんだと喚きだした。
「バカ息子が。」ぽつりとアルケイドが呟く。
真っ当に働いているなら、クリムゾンキャラバンを辞めさせる話はなかったことにしようかとLuciaは考えていた。
しかしながら・・・目の前の男は・・・。駄目だな、これは。
オメルタの借金をネタに揺さぶりをかけたら、あっという間に話がついた。
これで、ヘンリー・ジェイミソンの件は終了。次は・・・キャスか。
キャスは相変わらずモハビ前哨基地の酒場で、1人グラスを傾けていた。
「なぁ、Lucia」
『うん?なあに、せんせい。』
「彼女は何故こんなところで1人飲んでいるんだ?」
『前に聞いたときは、契約があって動けないって言ってた。』
「というか、彼女と知り合いなのか?クリムゾンキャラバンでは何も言ってなかったな。」
『アリスに・・・言うつもりなかったから。』
そっとキャスに近づき声をかける。
Luciaを見ると一瞬誰だったかという表情をした。
前に話をして、クリムゾンキャラバンを進められたと言うと何となく記憶が蘇ったのか、少しだけキャスの表情が和らいだ。
「キャシディ・キャラバンを買い取りたいですって?燃えて灰になったことを、あいつら知らないの?」
『燃えて灰になった?一体何があったの?』
キャスはLuciaとアルケイドの2人に視線を走らせ、グラスの中身をぐいと飲み干した。
キャシディ・キャラバンはレイダーに襲われて跡形もなく消え去ってしまったそうだ。
「そしてキャラバンのすべては、あんたの目の前にあるものだけってこと。」
「じゃあ、キャラバンを手放したって・・・いいんじゃないか?」
キャスがきっとアルケイドを睨む。
金の問題じゃない、とキャスは言う。
『でも・・・そのキャラバンの為に、いつまでもここにいるの?』
図星だったのか、キャスが一瞬言葉に詰まった。そして深いため息。
「・・・そうね。あんたの言うとおりだわ。もうこの場所にはうんざりしてたのよ。」
Luciaから契約書を受け取ると、キャスは自分の名前のサインをする。
契約書を眺め寂し気に笑うと、Luciaに紙を返した。
『ねぇ、せんせい』
「どうした?」
『うーんと・・・。』
「彼女が心配か?クリムゾンキャラバンに報告し終わったら、一緒に行動してやったらどうだ?」
『いいの?せんせい、また一緒に旅してくれる?』
アルケイドはLuciaの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「オールドモルモンフォートで待ってるよ。」
まずはクリムゾンキャラバンに行って、報告をしよう。
クエスト:You Can Depend on Me 完了