Midirがウィンドヘルムの重い扉を押し開けたその頃、Diyaabはラットウェイと呼ばれる地下道を通って、盗賊ギルドの本拠地ラグド・フラゴンとやらへと向かうところだった。
入ってすぐのところにいた無法者どもを倒し、先に進む。
こんな場所だ。後ろ暗い輩が潜んでいるんだろう。
ところどころで遭遇するスキーヴァーやならず者を倒して・・・
なんだここは
扉を開けると、地下貯水池のような開けた場所に出た。
カウンターがあり、店の主人らしき男がせっせと床を掃いている姿が見える。
・・・あそこにいるのはブリニョルフか。
ラグド・フラゴンへたどり着いたようだ。
近づいてくる人間が俺だとわかるとブリニョルフはにやにやしながら周りのギルドメンバーに目くばせをした。
どうやら俺がここへたどり着けるかどうか仲間内で賭けをしていたらしい。
賭けに勝ったのはブリニョルフ。皆からゴールドを渡されて上機嫌だ。
盗賊ギルドに入るのには、あと1つ仕事をこなす必要がある、と言う。
・・・面倒だな。
そう思ったが、黙って話を聞くことにした。
キーラバ、ベルシ・ハニー・ハンド、ヘルガの3人から借金を取り立ててくるというのが仕事だ。
盗賊ギルドが借金の取り立て?
怪訝な顔をしたことに気づいたブリニョルフが、借金がどうのというよりは盗賊ギルドの存在を忘れさせないためのパフォーマンスだな、と呟く。
・・・仕方がない。乗り掛かった船だ。3人のターゲットの話を聞く。
宿屋ビーアンド・バルブの女将キーラバについては、タレン・ジェイから情報が聞けるだろうと言うこと。
プローン質屋のベルシには、それはそれは大切にしている秘蔵の壺があるそうだ。
ヘルガの宿舎のヘルガは信仰しているディベラ像がなくなったら、彼女はどうするんだろうなぁ?
それぞれの情報をうまく使って、金を取り立ててこいとラグド・フラゴンを追い出された。
まずは宿屋ビーアンド・バルブへ足を運ぶ。
カウンターに人影はなく、近くの柱にアルゴニアンが一人もたれかかって俺を眺めている。
あれが、タレン・ジェイか?
威圧的にキーラバの居場所を聞くと、タレン・ジェイは暫く黙ったまま俺を見つめていた。
深くため息をつくと、盗賊ギルドからの指金か?と尋ねてきた。
どうやらタレン・ジェイは盗賊ギルドを侮るキーラバを心配していたようだ。
とうとう・・・この日が来たか、という表情をしている。
キーラバにはモロウウィンド内の農場に親族がいるらしい。その話を持ち出せば、言うことを聞くだろうと。
タレン・ジェイは念を押す様に、キーラバに乱暴なことだけはしないでくれと頼んでくる。
こんな人目のある場所で何かをするほど俺も愚かではない。
だが、そんなことをタレン・ジェイに伝える必要もないので黙ったまま頷いた。
暫くすると奥の部屋からキーラバが出てきた。
最初は宿の客かと思ったのだろう。
部屋を借りるなら45G、金がないなら出て行きなと言っていたが、俺がブリニョルフの使いだと言うと途端に表情を変えた。
あんた達なんかに払う金はないね!と鼻息も荒く見下したように言う。
どうも盗賊ギルドは・・・恐れられているというよりは馬鹿にされているようだな。
そういえば、と話し出す。
モロウウィンドのどこかの農場にアルゴニアンの家族がいるという噂を聞いたな。
ここまで話をすると、ちらとキーラバの顔を見つめる。
俺が仄めかした言葉の意味を、深読みしたキーラバは慌てて金は払うから家族に手を出さないで!と嘆願してきた。
何も言うことはない俺は黙ったままだ。
投げつけるように借金を支払うと、キーラバはさっさと出て行って!と睨みつけてきた。
やれやれ。次は・・・ベルシの所にでも行くか。
店に入ってきた俺を客と思ったベルシは最初は愛想よく挨拶をしてきたが、ブリニョルフの使いだというと皮肉な笑いを浮かべた。
金を返してもらおうかと言うと、これまたベルシもギルドの言うことなんか聞かない、お前たちは自分の頭の上のハエさえ追い払えないくせにと息巻いた。
ふう。
溜息をついた俺を見て諦めたと思ったのか、ベルシは店から出て行けと言う。
振り向きざまに、後ろに飾ってあった壺を割る。
壺の破片が飛び散る音とベルシが叫ぶ声が店に響き渡った。
やめろ!やめてくれーーー!!と叫ぶベルシ。
近くにいた嫁は固唾を飲んで成り行きを見つめている。
無言のままベルシに向き直ると、机の上に置かれた借金を回収して店を後にした。
最後はヘルガか。
ディベラの像とかブリニョルフは言っていたな。
デイドラ信者ということか?
宿屋に入ると、カウンターにいたヘルガがぎょっとした顔をした。
そして慌てて棚から金を取り出して、カウンターに小銭入れを置く。
誰から聞いたのかはわからないが、キーラバやベルシの話を耳にしたらしい。
ブリニョルフから言伝があると言うと、金は用意したから酷いことをしないでと言ってきた。
金さえ回収できれば、俺はどうでもいい。
小銭入れを受け取ると無言のままヘルガの宿舎を後にした。
ラグド・フラゴンへ戻り、ブリニョルフの目の前に回収した借金を置いてやる。
ブリニョルフは矯めつ眇めつ俺を眺め、思ったより掘り出し物だったな、とにやりとした。
よしと席を立ち、こっちへ来いと顎で指し示す。
メルセルにお前を紹介する、と先立って歩きながら説明しだした。
※ちょっとでも遅れると待っててくれるブリニョルフ
ラグド・フラゴンの奥にある貯水池にやってくると、男が一人腕組みをして立っていた。
あれがメルセルとかいうやつか?
ブリニョルフに、メルセルと呼ばれた男は俺を品定めするように嫌な目つきで見ている。
・・・こっちはお前に品定めされる謂れはないんだがなと思いながら、その目を見返してやった。
メルセルは小馬鹿にしたように鼻でふんと笑うと、ブリニョルフに向き直った。