ダイヤモンドシティを出て、遥か北にあるナカノ邸を目指す。
道すがら、今までの出来事を改めてニックに語るGeorge。
「そういやドッグミートはサンクチュアリにいると思っていたよ。」
「サンクチュアリを抜け出して、俺を・・・探し出したんだ。」
2人の会話を聞いて首を傾げるドッグミートの頭を優しく撫でる。
ドッグミートがGeorgeの元に辿り着いた時は、傷だらけだったという。
ニックはマクレディやプレストン、ハンコックたちがどうしていたかと話して聞かせる。
うんうんと懐かしそうに微笑みながら、その話をGeorgeは聞いていた。
「後は・・・時々ディーコンのやつが変装してダイヤモンドシティに来たりしてたな」
「ははは、相変わらずだな。」
そんな話をしているうちに、目的の家が見えてきた。
近づくと、家の中から言い争いをしているような声が聞こえてくる。
ニックと思わず顔を見合わせる。
「ちなみに、依頼者とは知り合い?」
「あちらさんはそう言っているらしいんだがな。俺はさっぱり覚えていなくて。」
話せば思い出すかもな、というニックを信じることにしよう。
家の中に入ると、夫婦らしき男女は一瞬口を噤んだ。
が、ニックを見止めると矢継ぎ早に、急いで探してくれだの怪我をしているかもだの懇願しだした。
ニックは興奮気味の男に落ち着くように言うと、詳しい説明を求めた。
少し冷静さを取り戻した男は名を名乗り、娘のカスミが急にいなくなったこと、誘拐されたと考えていることを話す。
しかしケンジ・ナカノの妻レイ・ナカノは夫の考えとは少し違うようだ。
「娘は、カスミはもう19歳なの。生きていく方法を知っているし、能力もあるわ。」
「つまり?」
「自分の意志で出て行ったと思う。」
そんなはずはない!とケンジは唸り声を上げる。
誘拐にせよ、自分の意志で出て行ったのせよ・・・情報が必要だ。
2人から、もう少し話を聞く必要があるな。
カスミはおじいちゃんにとても懐いていて、2人でよく機械を拾ってきては修理を行っていたらしい。
その祖父はもうなくなってしまった。カスミは暫くの間元気がなかったそうだ。
二階にあるカスミの部屋や離れた場所にある小屋を見て回る許可を得たので、ニックと2人で何か手がかりがないかと探して回る。
家の中のあちこちにカスミが残したホロテープがあった。
機械音痴の両親に代わって、あれこれ直したりしていたようだ。
離れの小屋で鍵のかかった金庫を見つけた。
ナカノ夫妻には申し訳ないが・・・開けてみよう。
中からは、またしてもホロテープ。
ニックと2人で耳を傾ける。
「ニック。どうやらカスミは・・・」
「これが真実かどうか、確認が必要だな。」
カスミは直したラジオから聞こえてきた情報を元に・・・ファーハーバーという場所へ向かったようだ。
いったいどんな場所なのか。
ともかく、両親と話をする必要がある。
小屋を後にし、2人の元へと戻るとしよう。
「なにかわかったのか?」
戻ってきたGeorgeとニックの姿を見て、ケンジ・ナカノは期待に満ちた目を向ける。
「ああ。カスミは・・・ファーハーバーへ向かったようだ」
カスミが自分の事を人造人間だと思っているようだと告げると、夫妻は悲鳴に似た声を上げた。
「そんな・・・!あの子は、私がお腹を痛めて産んだ子です!人造人間なんかじゃ・・・」
「ラジオなんか触らせなければよかった!どうしてこんなことに。」
動揺する2人に落ち着くようにニックが声をかける。
カスミを連れ戻すために、ファーハーバーへ行きたいと言うと二つ返事で船を貸してくれた。
夫妻に今まで通り過ごす様に伝えると、ファーハーバーへ向かうために船へと乗り込む。
「ファーハーバーか。ニックは行ったことがあるか?」
「いや。どんな場所か見当もつかんな。」
ドッグミートが心配そうに2人を見上げている。
「ドッグミート、船に乗るのは初めてだよな?揺れるかもしれんが、落ち着いていれば大丈夫だ。」
くぅん?
日がすっかりと沈み、夜も更けた頃・・・霧の中に灯りがぼんやりと浮かんでいるのが見えてきた。
あれが、ファーハーバーか。