港に降り立つと、こちらをじっと見つめる2人組がいることに気づいた。
俺たちを歓迎している・・・ようには見えない。
「警戒されているようだな」
「まぁ、こんな夜更けにやってくるような連中は真っ当な奴らだとは思われないだろ。」
「George、事を荒立てるなよ。」
「わかってるって。」
近づいて行くと、銃を持った男がより一層警戒の色を示した。
アヴェリーと名乗る女性は、2人に何を求めてファーハーバーへやってきたのか尋ねる。
「カスミ、という女性を探している。彼女の両親が心配しているんだ。」
カスミという名前に覚えがあるという素振りをアヴェリーは見せた。
ファーハーバーへ来ていたことは間違いないようだ。
そんな話をしていると、遠くから何か警戒音らしき音が聞こえてくる。
銃を持った男が舌打ちをして、どこかへと向かって行く。
「ねえ、来て早々で悪いのだけれど・・・町を守るのを手伝ってくれたら、どんな質問にも答えてあげるわ。」
「町を守る?さっきの警戒音と関係があるのか?」
「とりあえず、ついてきてくれるかしら。」
ニックと顔を見合わせ、アヴェリーに手を貸そうと伝える。
街を守る門らしき場所の上から眺めていると、霧の中から何かがやってくるのが見えた。
街の住人と力を合わせて撃退すると、アヴェリーはほっとした顔をした。
それにしても、見たことのないクリーチャーだな・・・。
連邦とは生態系が異なるようだ。
住人に礼を言われた。手を貸したことを喜んでくれたようだ。
少し離れた場所にいるアヴェリーに声をかける。
「手伝ってくれてありがとう。」
「どういたしまして」
「で、カスミを探してファーハーバーまでやって来たんだったわね?」
「そうだ。我々は彼女の両親に頼まれて探しにきたんだ。」
アヴェリーはGeorgeとニックに視線を走らせる。
カスミはアカディアという場所に身を寄せているらしい。
アカディアまでの道のりはオールド・ロングフェローという人物に案内を頼むといいと教えてくれた。
Georgeとアヴェリーが話をしているところへ、先ほど銃を持って警戒していた男が割って入る。
チルドレン・オブ・アトムを壊滅させようというアレン。
アヴェリーはそんなアレンを咎めるようにため息をついた。
オールド・ロングフェローは酒場にいると言うと、アヴェリーは立ち去って行った。
酒場のバーテンダーにオールド・ロングフェローのことを聞くと、あそこにいると指さした。
片隅で1人酒を飲んでいる男がそうだという。
「キャプテン・アヴェリーから紹介された。アカディアへ案内してくれると聞いたんだが。」
オールド・ロングフェローはちらりとGeorgeを見ると、返事もせず酒を飲み続ける。
「・・・。アカディアか。なんのために行くんだ。」
「カスミという女性がアカディアにいると聞いた。彼女を探しているんだ。」
ふん、とオールド・ロングフェローは鼻を鳴らす。
案内してやってもいいが、自分の言うことを必ず聞くように、と念を押してきた。
ニックと2人で頷くと、仕方がないと呟きオールド・ロングフェローは立ち上がった。
「ここの霧は人を蝕む。RAD-Xを十分な量用意するんだな。」
「RAD-X?放射能を含んだ霧なのか?」
「行けば、わかる。」
オールド・ロングフェローの後を追って走り出す。
これでも腹に入れておけとマイアラークジャーキーを手渡された。
「これは・・・?」
「美味くはないが、アカディアまでの道のりの間は少しは効いてくれるだろうよ。」
「George、食うのか?」
ニックが幾分心配そうに、手渡された物体を見つめている。
折角もらったものだ。臭いが気になるが、鼻をつまんで口の中に放り込んだ。
レイダーのような集団(トラッパーというらしい)を倒し、更に山道を登って行く。
漂う霧の中を走り抜けると、ガイガーカウンターがカリカリと音を立てる。
道の途中で、髪が抜け落ち顔色の悪い人物が声をかけてきた。誰だ?
オールド・ロングフェローが憎々し気に「放射能崇拝の馬鹿野郎」と呼んだ人物。
チルドレン・オブ・アトムのメンバーだという。
ファーハーバーにいるアレンもチルドレン・オブ・アトムのことを言っていたな。
「George。輝きの海で出逢った連中を覚えているか?」
「・・・ああ。バージルのところへ行く途中で出逢った奴らか。」
「連中と同じアトムの信者というわけだ。」
チルドレン・オブ・アトムの信者は、オールド・ロングフェローのことを罵りGeorgeに信者にならないかと誘う。
悪いが俺は・・・何も信じない。
信者の誘いを断ると、オールド・ロングフェローと共に再び山を登る。
しばらく行くと、大きな建物が見えてきた。
オールド・ロングフェローがアカディアだと告げる。
「ロングフェロー、案内ありがとう。助かったよ。」
「俺は山小屋にいるからウィスキーでも持って訪ねてくるといい。」
「ああ、またな」
オールド・ロングフェローは振り返ることもせず、来た道を一人降りて行く。
さてと・・・カスミを探さないとな。