一息つくと、ニックは腰を上げた。
チェイスやファラデーから頼まれたこともあるし、一度ファーハーバーへ戻るとしよう。
ドッグミートが尻尾を振って俺を見上げている。
「腹減ったか、ドッグミート?」
わんわん!
頭を撫でてやると嬉しそうに鼻を鳴らす。
そういや、俺も腹が減ったな。
「The Last Plank」のドアを開けると、威勢のいい声が聞こえてきた。
カウンターにいる若い男がどうやら宿屋兼酒場の主人らしい。
俺たちを見止めると、手招きして椅子に座るように言ってくる。
「酒か?宿か?」
酒の注文をすると、ミッチと名乗る男は嬉しそうに笑った。
キャプテン・アヴェリーに手伝いをしてくれた礼だと、一杯奢ってくれるという。
好意は有難く受け取ることにする。
「あんた、こんな場所に何しに来たんだ?霧に頭やられないうちに本土に戻りな。」
「霧?ああ、ここの霧は放射能を含んでいるんだな。ロングフェローも同じようなことを言っていた。」
ミッチは冷えたエールを差し出す。
長いこと霧の中にいると、精神がやられちまうのさ、と吐き捨てる様に言う。
「だから悪いことは言わねぇ。早く帰りな。振り返らずにな。」
「そうはいってもな。」
「こんな場所に来るなんて、あんたも物好きだな。」
放射能を含む霧。
一体何故そんなことになっているんだ・・・?
そして、そんな場所に彼らは何故住み続ける。
「故郷だからだよ。」
エールを飲み終えると、ミッチに一晩部屋を借りたいと告げる。
部屋の鍵を受け取ると、早速二階へと上がって寝るとしよう。
翌朝。
アカディアでチェイスに頼まれた用事を片付けるか・・・と考えながら歩いていると、入り口付近でなにやら揉めている声が聞こえてきた。
ニックを顔を見合わせ、急いで駆け寄る。
キャプテン・アヴェリーや住民が取り囲む中、アレンが男に銃を突き付けているのが見えてきた。
声をかける間もなく、アレンが男に鉛の弾を撃ち込んだ。
どうやら撃たれた男はチルドレン・オブ・アトムの信者らしい。
アレンはチルドレン・オブ・アトムがファーハーバーを全滅させるつもりだ!と声高に訴える。
キャプテン・アヴェリーが異を唱えても、聞く耳を持たない。
ひとしきり盛り上がると、住民たちはそれぞれも持ち場へと戻って行く。
アレンは俺に姿を見つけると、暫く睨みつけていた。
「なんだ?銃をぶっ放してヒーロー気取りか?これは俺たちの戦いだ。お前のじゃあない。」
「手を貸すことがそんなに悪いことか?」
ふんっと鼻を鳴らし、軽蔑したような視線で俺とニックを見つめる。
「施しは人を駄目にする。どんどん縋るようになり、やがては施しなしには生きられなくなっちまうのさ。」
「施し?何の話をしている?」
「俺たちハーバーマンは自分なりのやり方で生き残る。」
そう言い捨てて、アレンは立ち去って行った。
「どうにも、ここの住人達は気が荒いというか、打ち解けにくいな。」ニックが呟く。
さっきアレンも霧がどうのと言っていた。キャプテン・アヴェリーに話を聞いてみるか。
「キャプテン・アヴェリー。」
「ああ、アカディアから無事戻ってきたのね。」
「さっきの騒ぎは一体・・・?」
キャプテン・アヴェリーは深々と溜息をついて、椅子に座り込んだ。
「これ以上、チルドレン・オブ・アトムの信者を殺したら戦争になってしまうというのに。」
「なにか、手伝えることはないか?」
そうね・・・とキャプテン・アヴェリーは、考えを巡らせる。
マリナーが人手が欲しいと言っていたから、話を聞いてやって欲しいと言う。
他にも困っている住民がいると思うから、声をかけてとキャプテン・アヴェリー。
「あと、霧コンデンサーの修理に出たハワード・ダンバーが戻らないの。彼を探してきて欲しい。」
「霧コンデンサー?ああ、アカディアにいるファラデーがコンデンサーがどうのと言っていたな。」
キャプテン・アヴェリーからの依頼(クエスト:Safe Passage)を受け、マリナーを探しに立ち上がる。
気を付けてというキャプテン・アヴェリーに頷いて応える。
マリナーからの依頼(クエスト:Hull Breach パワーツールを探す)
キャシー・ダルトン(クエスト:Blood Tide 国立公園キャンプ地のフェラル・グールを始末する)
後は・・・チェイスが言っていたファーハーバーでの協力者か。
人造人間だと言っていたな。協力的ではない場合、識別番号を伝えるといいとチェイスが教えてくれた。
雑貨屋に入り、ブルックスに声をかける。
「さぁさ、ガラクタが欲しいならお役に立つよ。」
「チェイスの依頼で来た。」
「チェイス?誰だね、それは。買い物をしないなら出て行きな。」
チェイスから言われた番号を伝えると、慌てた様子で行方不明になった人造人間の話をし出した。
ブルックス曰く、逃げ出した人造人間はロクデナシのようだ。迷惑ばかりかけやがってと言わんばかり。
「まぁ、そうは言ってもチェイスのところに連れて行かんとな。」
逃げて行った方向を聞き、ブルックスには礼を言って雑貨屋を後にした。