ファーハーバーから戻ってきた俺とニックはホームプレートで一休みすることにした。
どうしても、ニックにショーンのことやファーハーバーに行く前の出来事を聞いてもらいたかった。
少しだけ重荷を降ろしたかった。
エリーから貰ったラム酒をグラスに注ぐ。
ニックは酒を呑まないから、俺だけ味わうことにする。
「珍しいな。酒の力を借りないと話せないようなことなのか?」
「・・・ニックは鋭いな。さすが名探偵。」
茶化すような俺の言葉に、ニックは眉を上げて返事をする。
誰にも言わないで欲しいと前置きして、ケロッグに連れ去られた俺の息子ショーンがインスティテュートのファーザーだったことニックに告げる。
息子の真意を知りたくてインスティテュートに手を貸して暫くの間働いていたが、袂を分かつことになった話をする。
時々言葉に詰まる俺の肩をニックが元気づける様に叩く。
インスティテュートを爆破した後、1人になりたくて放浪していたことは以前にも話した。
デスクローやマイアラーククイーン、スーパーミュータントにガンナーの拠点。
色々なものに喧嘩を売りまくった。
そんなことをしていたある日、陽気な声がPip-boyから聞こえてきた。
ヌカ・コーラ・ファミリー・ラジオ。
余りの懐かしさに、思わずラジオが示した場所へと足を向けていた。
「ヌカ・ワールド?なんだそれは?」
「昔建てられたアトラクション施設だよ。ノーラと・・・デートで行ったことがあるんだ。」
※着ているのはCROSS_MojaveManhunter_BethNetのコートなし。ファーハーバー編の最初でも着ていました。
ヌカ・ワールド交通センターに近づくと、ガンナー達が攻撃を仕掛けてきた。
こんな場所にまでガンナーがいるのか。
一通り片付けると、ケイラー指揮官というのが”ケイラーへの命令”という書状を持っていたので拾い上げて読む。
こいつらもラジオを聞いて、ここへやってきたようだ。
調査に出た面子が戻ってこないらしい。・・・なるほど。
それにしてもヌカ・ワールドへは、ここからどうやって行くんだ?
駅構内へと続く階段を降りると、怪我をしているのか腹を抱えて座り込む男の姿が見えてきた。
「おい、大丈夫か?」
「くそっ、騙された!」
男は家族をヌカ・ワールドのレイダーに誘拐されたと訴える。
「ヌカ・ワールドはまだやっているのか?あそこは覚えている。」
「ああ、まだやってるよ。俺の妻リサと子供のコディが・・・連れ去られたんだ。頼む、連れ戻してくれないか。」
「連れ戻す手伝いはしてやる。だが、その前にお前の傷を治そう。ほら、スティムパックだ。」
鞄からスティムパックを取り出そうとする俺を、慌てて男は止める。
「いやいや、俺はいい。それは俺の家族の為に残しておいてくれないか。」
その慌てぶりに、何かおかしいと俺の勘が囁く。
回復手段を示したのに拒否したことを疑うと、男は諦めたように立ち上がった。
怪我などしていないのだ。
「騙して悪かったよ。怪我なんかしちゃいないのさ。」
「いったいどういう事か説明してもらおうか。」
ヌカ・ワールドにレイダーがいることは真実だと言う。
レイダー達は退屈を紛らわせるためなのか、ガントレットと呼ばれる闘技場を作り出し、外部の人間が迷い込んできたら血祭りにあげているらしい。
仲間のトレーダー達が餌食にならないように、外部の人間を誘い込む役目を男は行っていると言う。
「・・・仕方がない。レイダーの相手をしてやるよ。お前が命を張ることはない。」
男は俺の言葉に目を丸くする。
ヌカ・ワールドへ行くためには、モノレールに乗って行く必要がある。
そのモノレールを動かすための管理ターミナルのパスワードを、男は俺に渡してきた。
「管理ターミナルで電力を戻せばモノレールは動く。向こうに行くときは気を付けて。」
「ああ、わかってるさ。騙そうとした奴が心配するな。」
「・・・本当にすまない。」
ターミナルを使って電力を戻し、モノレールを動かす。
アナウンスが流れ、ゆっくりとモノレールが走り出した。
長いトンネルを抜けると、窓の外には大きなヌカコーラの看板が見えてきた。
観覧車やホテルのような建物もある。
ああ、ヌカ・ワールドは、本当にまだあったんだな。
ぼんやりとそんなことを考えていると、アナウンスが急に途切れ、代わりに男の声が俺に語り掛けてきた。
ポーター・ゲイジと名乗る男は時間がないから手短に話すと言い、ガントレットを生き抜いたら詳しい内容を教えてやろうとだけ告げると、ぶつんと放送を切ってしまった。
一体なんだっていうんだ。
モノレールがヌカ・ワールドの駅に着いた。
荒れ果てた構内に降りると、新しい獲物の到着を喜ぶアナウンスが流れてきた。
ガントレットね。
なんだかよくわからんが、喧嘩を売ったことを後悔させてやるとするか。
上手くいけば、ノーラとの楽しい思い出がある場所で、死ねるかもしれない。