
元来た道を戻り、工場を後にする。
裏手に廻り、建物の屋上を目指す。旗を立てないとな。
しばらく考えあぐねた末、オペレーターズの旗を立てることにした。
「オペレーターズ、か」
「なんだ、不満なのか?」
「いや。俺は・・・アンタに従うまでだ。」
残すはサファリ・アドベンチャー。
ここもノーラと来たな・・・。
懐かしい気持ちで入り口を見ていると、何か動くものがあるのに気づいた。
ドッグミートも気づいたのか、姿勢を低くして辺りの臭いを嗅いでいる。
「どうした、ボス?」
「待て、中に入るな。」
スコープ越しにデスクローと・・・誰かが戦ってるのが見える。
デスクローと戦っていた人物は無事なようだ。
こちらに気が付いて、近寄ってくる。
レイダーかと思っていたが・・・違うな。
これは、グロッグナック・ザ・バーバリアンか?まさかな?
自分の事を”シートー”と呼ぶ男は、デスクローを倒した俺の事を強いと褒めた。
ゲイジが鼻で嗤うのが聞こえたが、無視してシートーとの会話を続ける。
「君は・・・いったい?どうしてそんな話し方なんだ?」
「お前は強いな。シートーは話すのが上手くない。人とはずっと話してないから。」
「そうか、1人でここに?あの怪物はなんなんだ?デスクローか?」
「知らない。”デス”は”悪”で、怪物は悪いという事しか知らない。」
ボス、放っておこうぜとゲイジは呟く。
シートーが、家族を怪物から守りたいと言い、助けを求めてきた。
家族が・・・いるのか。
先ほどは、人とはずっと話をしていないと言っていたが、どういうことだろう。
シートーに家族の元へ連れて行くように言うと、嬉しそうに笑い走り出す。
俺が後を追い出したのを見て、ゲイジがうんざりしたような顔をした。
ここだ、とシートーが立ち止まったのは”霊長類ハウス”という名前のついた建物だ。
後に続いて中に入ると、ゴリラが俺たちを迎えてくれた。
「これが家。これが家族」
ニコニコしながらシートーが説明する。
「ええと。どうしてこのゴリラたちに育てられることになったのか、教えてくれるか?」
「最初の家族が死んでから、歩き続けて、ここを見つけた。シートーは新しい家族を見つけた。」
「そうか。素敵な家族だね、シートー。」
「お前、いいこと言う。新しい友達、好きだ。」
そう言うと、またにっこりとシートーが笑う。
ゲイジはと言うと、渋い顔をして遠巻きに俺たちの事を眺めていた。
ある日、しわくちゃの怪我をした人間がやってきたとシートは言う。
その人間は、自分が怪物を作ったと言っていたらしい。
怪物を作った?どういうことだ?
そのしわくちゃの人間から怪物を止めるのに役立つと渡されたと、シートーはホロテープを取り出した。
ホロテープをPip-Boyにセットして、早速聞いてみる。
ぜいぜいと苦しそうに息をしながら、声は自分がDr.ダレン・マクダーモッドで、ゲータークローという怪物を作り出したと話し出した。
外で見かけたデスクローに似た化け物は、ゲータークローというらしい。
地下にクローン工場があるようだ。
作り出した場所を探し出す必要があるな。
デスクローは巣で卵を産んでいたが、ゲータークローはクローン工場で生み出された。
まずは、ゲータークローを作り出した場所を探し出すか・・・。
そう考えていると、シートーがしわくちゃの人間は大きな三角形の家から来るのを見たと教えてくれた。
シートーからの情報を元にクローン工場を探すため外に出ようとすると、シートーがついて行きたいと言い出した。
「駄目だ。シートーはここに残って家族を守るんだ。」
「わかった。家族を守る。」
バカバカしいと言わんばかりにゲイジが欠伸をする。
思わずゲイジの向う脛を蹴飛ばしてやると、凄い形相でこちらを睨んできた。
「じゃあ、俺たちはクローン工場を探してくるから、シートーは用事がある以外は外に出るなよ。」
なんで、あんな奴の手助けをするんだ。
俺たちが制圧するんだから、他に人間がいたら邪魔だろう。
そうゲイジは文句を言いながら、俺の後ろを歩く。
「大きな三角形の家だ。」
「ボス、俺の話聞いてるのか?」
くそっと舌打ちして、入り口近くのウェルカムセンターが三角屋根だったぞと言う。
ここか。
「それにしても、入り口から霊長類ハウスまで走っている時に、よく見てたな。」
「周りの地形や目印を確認しておくのが、俺の役目だからな。」
「いいNo.2だ。」
「・・・馬鹿にしてるのか?」
そんなつもりはないんだがな。
ゲイジはそっぽを向いて、ウェルカムセンターの中へと入っていった。