Fallout4 Sub libertate quietem(9)

Fallout4 Sub libertate quietem(9)

プレストンが俺の腕を掴み、先を進んで行く。
たしか、この辺だったはず・・・とぶつぶつ呟きながら、何かを探している。

ケンブリッジ警察署近くにある、一軒の建物の前で立ち止まる。
「将軍。中を確認してくるから、待っててくれないか?」
「・・・いや、プレストン。俺も行く。」

溜息をつきながら、まじまじと俺の顔を見つめる。
わかった、と小さく呟いた。

「ただし無理はしないでくれ。いいな?」
子供諭すような言い方に思わず笑みがこぼれてしまった。
緊張が解れたのを感じ取ったのかプレストンも、ふと笑う。
「アンタには余計なお世話だった、な。」

中には本がびっしりと並んだ本棚がある。幸いなことに誰もいないようだ。
「プレストン、ここは・・・?」
「先日、偵察隊のフランクが見つけてきたんだ。誰もいないようなら、休憩地点として手に入れようかと思ってな。」
「なるほど。」
「とりあえず、休もう。」

本に囲まれた書斎のような部屋で、2人とも椅子に腰かける。
これはすごいな、とプレストンが辺りを見回す。

本の匂い。
昔、図書館でノーラと出会った頃の思い出が急に蘇ってきた。

「・・・俺とノーラは図書館で出逢ったんだ。」
「ノーラ?ああ、以前言っていたアンタの奥さんだな。」
「うん。彼女は法律の勉強をしていて、俺は軍人で。」

結婚してすぐに戦地へ。
暫く離れて暮らしていたが、退役して、ショーンを授かって。

200年以上前の暮らしの話を聞いて、プレストンはピンとこない部分もあるようだが、じっと耳を傾けてくれている。

核が落ちたあの日のこと。
いきなり現れたケロッグにノーラを殺され、ショーンを奪われたこと。
力を入れて握り過ぎた拳は白くなっている。
「・・・将軍。無理に話すことはない。」
「いや、聞いてくれ。・・・誰にも話してなかったんだ。聞いて・・・くれるか?」
プレストンは微笑んで頷く。

ありがとう。
話をすることで、俺も落ち着いてきたのを感じる。

その後は、Vault111で再び目を覚まし、サンクチュアリに戻ったことやコンコードでプレストンたちに出逢った頃の話が続く。
またプレストンが、ふと笑った。
「ああ、道理で。」
「なにが?」
「アンタ、俺たちの話を聞いて独立戦争の話をしただろ。」
「ミニッツメンといったら独立戦争だろう?グールなんてのも、その時初めて聞いたしな。」

そこからは皆と共に行動した話になる。
ミニッツメンやB.O.S.、レイルロードにインスティテュート・・・。

インスティテュートのファーザーがショーンだったというと、プレストンが眉間に皺を寄せた。
核に汚染されていない人間を探して、人造人間製造の手本とする。
グレイトウォー以前に生まれ、冷凍保存されていた赤ん坊のショーンに白羽の矢が立てられた。
科学者としての素質もあったのだろう。
成長してインスティテュートを統率するファーザーとなったのだ。

プレストンが考えを巡らし、ぽつりと呟く。
「C.I.T本部に乗り込んだ時、ファーザーとやらはいなかったと記憶しているが・・・。」

心臓にナイフを突き立てられたような感覚が走る。
「俺が、」
ハッとしたような表情でプレストンが俺を見つめる。

「この世界は汚染されていると。だから再生されるべきだと言うんだ。」
「再生?どういうことだ?」
「さぁな。ノアの箱舟のように洪水でも起こすつもりだったのか。今となってはわからない。」
自分の手のひらを見つめながら、考えを巡らす。

俺は、ノーラが生きていた時代のことや仲間たち全てを否定されたような気がした。
インスティテュート以外は不要だという、その姿勢に共感できなかった。
共に生きて行くことを模索することをしようとはしていなかった。邪魔者は消すまで、と。
だから。
だから、引き金を引いた。



ちょっと待っててくれと席を外すと、プレストンは温かい飲み物を入れて戻ってきた。

「・・・話してくれて、ありがとう。将軍。辛かっただろう。」
「こちらこそ、聞いてくれて、ありがとう。」
暫くの間、2人とも温かい飲み物を口にして黙ったままでいた。

「・・・前にプレストンが言ってただろう?」
「うん?」
「何か、何か他に手立てがあったんじゃないかと今でも思うって。俺も、その思いに悩まされるんだ。」
そうだな、と穏やかな声でプレストンは同意する。

ただな。
俺たちはその後で将軍に出会って、救われた。
「未来はもっと良くなると、心の底からそう思っているんだ。」

アンタが辛いときには、力になりたいと思っているのは俺だけじゃないはずだ。
だから・・・嫌でなければ、もっと頼りにしてくれ。
「ニックやディーコン、マクレディだってちゃんと話を聞いてくれると思う。」
真面目な顔をしてそう言うプレストンを、まじまじと見つめると、少し照れくさそうな顔をした。

ありがとう。
そう言葉にしようとすると、思わず涙がこぼれそうになった。

俺は、ここにいる。
ショーン。お前は、連邦は死んだと、汚染された大地だと、そう言ったけれど。
俺はこの地で生きていく。本当はお前と共に生きていきたかった。

その思いを振り払うように、大きく息を吐きだす。
どう足掻いてもショーンは生き返らない。何故なら俺がこの手で殺めたから。
ならば悔いのないように、守った連邦をより良くするためにできることをしよう。

プレストンに話を聞いてもらい、心のざわめきが凪いでいる。

「プレストン。心から感謝しているよ。」



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