
警察署を出ると、クォンが神々の楽園はこっちだと先頭を切って歩き出す。
クォンの後を歩きながら、Wraithはドーシー一家の襲撃の跡が生々しく残るコロラドスプリングスの様子を観察していた。
途方に暮れたように、項垂れて座り込む男。
母親の周りで遊ぶ子供達。
そして、商魂逞しく、ガラクタを集めて売り出そうとしている商人たち。
警察官たちが守りを固めていて、通り抜けることができない場所もある。
『何故、あちらへは行けないんだ?』
「あー、そっちは、まだ行かないほうが良い。」
Wraithの怪訝そうな視線を受けて、クォンがため息交じりに説明する。
「総主教の屋敷やら何やらがあるんだ。」
「どういうことだ?自分たちはぬくぬくと守られてるってことか?」
Zephyrがくってかかるのを、Wraithが押し留める。
クォンは肩を竦めるだけだ。
「ジョシュア、いい加減にして!ドーシー一家はアンタみたいな老人なんて躊躇わずに殺すわよ!」
言い争う声を聞きつけ、クォンが走り出す。
怒りに任せて老人が店の中に飛び込んで行こうとしているところに遭遇した。
「おいおい、じーさん。どうしたっていうんだ?」
「やかましい、若造が!!ドーシー一家を家から追い出すんだ!くそったれどもが!!」
振り回す散弾銃をクォンが押さえつけると、老人、ジョシュア・キャサディは憎々し気に睨みつける。
クォンだけでなく、レンジャー部隊も周りにいることに気付くと、手を振り払い渋々といった体で銃を仕舞い込んだ。
「警察は、ドーシー一家が襲撃した時役立たずだったくせに、家を奪われた老人の邪魔までするのか」
『・・・家の中にドーシー一家がいるのか?』
ジョシュア・キャサディとその妻マーサが頷く。
クォンはやれやれと言った風に頭を振った。
『人数は?』
「わからん。さほど多くはないとは思うが・・・。」
「じゃあ、アタシたちでドーシー一家を片付けてきてやるよ。」
マーサ・キャサディはほっとした顔をした。自分の夫が殺されるのを目の当たりにしないで済むのだ。
しかし、ジョシュアはというと納得できないのか、憮然としている。
「折角助けてくれると言っているのに、アンタは何て顔をしているんだい!」
「・・・まぁ、戦いのプロに頼んだ方がいいんだろうが・・・。」
『そうだな。じいさん、死に急ぐことはない。』
ガレージの扉は開いたままだ。
中の音に集中しながら、そっと近寄る。
店の奥の方で、ごそごそと動く音がする。
ジョシュアたちが反撃するとは思っていないのか、見張りも立てずに商品を漁っているようだ。
Wraithが静かに散開するよう指示を出す。
スナイパーライフルを構え、ドーシー一家の背中に一発撃ち込んだ。
後ろから撃たれるとは思っていなかったのか、もう一人は一瞬ぽかんとした顔をした。
「この、てめぇら!卑怯だろうが!!」
「アンタたちに言われる筋合いはないね!」
Zephyrがあっという間に残った1人を片付ける。
そのスピードに、ルシア・ウェッソンが目を見張った。
中にいたドーシー一家は2人だけだったようだ。
少し荒らされてはいるが、ジョシュア・キャサディが商いを再開するのに障害になることは無さそうだ。
「死体はどうする?」Thunderが弾を拾い集めながらWraithに尋ねる。
『このままにはしておけないな。Delvin、そっちの男を外に出してくれ。俺はこいつを運ぼう。』
武器や防具を剥ぎ取り、身を軽くすると、死体を担ぎ上げ店の外へと放り出す。
姿を現したWraithたちを見て、ジョシュア・キャシディは喜びの声を上げた。
「終わったんだな!やつらの世話をしてくれて助かった。」
『少し荒らされているが、片付ければなんとかなるだろう。』
「ほら、だから言ったろう?その道のプロに任せるのが一番いいんだって。」
妻の言葉に少しむっとしたが、ジョシュアは否定しなかった。
クォンは離れた場所でWraithとZephyrを眺めている。
何かを、判断するかのように。
ジョシュア・キャサディは助けてくれた礼にと、今度店に来た時には商品をディスカウントしてやると言う。
「そういえば、あんた達、医者の当てはあるのかい?」
『いや。もし手を貸してくれるような医者がいるなら、教えて欲しい。』
Wraithの言葉にマーサが頷く。
街の北側にあるガレージに、パーカー医師が診療所を開いているという情報を教えてくれた。
「今は、襲撃の後始末で忙しいかもしれないけど・・・。」
『わかった。パーカー医師に声をかけてみよう。情報感謝する。』
マーサ:ドーシー一家が片付いて、どんなに安心したか言い表せない。
「本当にありがとう。」
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