ノヴァックからボルダーシティへ。
ここから北上すれば辿り着くらしい。
よし、ともう一度拳を叩く。
腹ごしらえしたら発つとするか。
あのモーテルで食えるものを出しているとは思えないが・・・。
「え?食べ物?そんなものここじゃ出してないよ。」
『ま、そんなこったろうな。』
ジニー・メイに食事があるか尋ねてみるが、つれない返事だ。
モーテルの向かいにあるテントにキャラバン隊がやってくるから、そこで買いなと言う。
それはそうと、ノヴァックを守るスナイパーたちに会ったかい?
スナイパー「たち」?
ジニー・メイの言葉が引っかかる。
『マーニーには会ったが、それ以外はいなかったぜ』
「ああ、交代制でね。もう一人はブーンさ。ここのところ夜勤のようだ。」
『なるほど・・・そいつもチェックのスーツ野郎の事を何か知ってるのか?』
「どうだろうねぇ。マーニーが知り合いってことは、ブーンも何か知っているかもしれないけど。」
なるほど。
念のため、ブーンとやらにも会っておくか。
夜勤ということは夜に会いに行かなきゃならねぇな。
空き部屋があるかと尋ねると、ジニー・メイは久々の客だと喜んだ。
まずは腹ごしらえするか。
ジニー・メイが話していたテントは、モーテルの目と鼻の先に設けられていた。
バラモンを連れたキャラバン隊が丁度荷物を運んできたところだった。
キャラバン隊やテントにいた医者と話し込んでいるうちに、辺りが暗くなる。
月が高く昇った頃、再び恐竜の頭を訪れる。
ドアを開けると、マーニーと同じように第一部隊のベレーを被った男がライフルを手に眼下を見渡していた。
後ろに立つVesperの気配を感じ取り、銃を構えて振り返る。
「・・・後ろに立つな。」
『あんた、もうひとりのスナイパーか?』
「・・・だったらどうだというんだ。」
サングラスをかけているために、表情が読めない。
舌打ちして、ブーンが銃を収める。
『昼間にいたスナイパーは”仲良く”できそうな奴だったが、アンタは無理そうだな。邪魔したな。』
「待て」
話をする雰囲気ではないようだと踏んだVesperが立ち去ろうとすると、ブーンが慌てたように引き留める。
足を止めたVeperの背に、探し物をして欲しいと頼んできた。
『どういうことだ?』
「・・・お前は、この街の人間ではない。私は信頼できる人間を待っていた。」
『アンタは、俺を信頼するのか?ノヴァックにただ立ち寄っただけの人間を。』
Vesperが煙草の灰を足元に落とすのを、ブーンがじっと見つめている。
暫く沈黙が続いた跡、ブーンの眉間の皺がぐっと深くなる。
「私の・・・妻がある晩リージョンの奴隷商人に連れ去られた。」
絞り出す様にそう言うと、また、沈黙。
もう一本煙草に火を点け、Vesperはブーンの言葉を待つ。
「奴らは・・・迷うことなく妻を連れ去って行った。カーラだけを、だ。他には見向きもせず。」
『で?』
「何者かが手引きしたとしか考えられない。」
『アンタの奥さんを取り戻すのを手伝って欲しいってことか?』
ブーンが鼻で嗤う。
「妻は、もういない。」
『どういうことだ?どこかの変態に買われたのか?』
「いや、死んだ。私はリージョンに彼女を売り飛ばしたろくでなしを探している。」
”死んだ”という言葉を口にしたとき、ブーンは確信しているように思われた。
死んでいるかもしれない、死んだだろう、ではなく”死んだ”なのだ。
Veperが怪訝そうにしているのを感じ取ったのか、ブーンは視線を逸らしながら話を続ける。
奴隷商人は迷うことなくノヴァックのブーンの家へと辿り着き、妻を攫い、また帰って行ったらしい。
道を示した人間がいるとしか思えない。
『つまり、復讐の手助けをしろ、ということか。』
背を向けたブーンが、被っていた第一部隊のベレー帽を渡してきた。
犯人と思う人物を恐竜の正面へ連れてきて欲しい。
ベレー帽がその合図だ。
「俺が、始末する。」
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