Fallout NewVegas~Snake in the grass

Vesperがベレー帽を受け取ったことを、頼みを聞いてくれると判断したのかブーンは少しだけほっとしたような表情をみせた。
が、すぐに眉間に皺を寄せ、片がつくまで俺に話しかけるなと言い、背を向ける。

仕方がねぇな。
誰か適当に見繕って連れてくるか。

本当に犯人探しをしたいなら、自分で動いていただろう。
それができなかった理由。
恐らくブーンの中では目星がついているのではないか。そうVesperは考えた。
復讐するだけの証拠が見つけられていないのか。若しくは殺すのをためらう理由があるのか。

『くっそ面倒くせぇこと頼みやがって。』

恐竜の階段を降りながら、そう呟いた。



朝になったら住民に話を聞くか。
一旦モーテルで一休みしようと、鍵を受け取りにジニー・メイの元へと向かう。

「今日はもう家に戻るとこだよ。」
『ああ、すまん。さっきまで、ブーンとやらに会っててな。部屋の鍵をくれ。』

ジニー・メイは鍵の束を探りながら、ブーンについて話をする。

「どんな男でも、妻を失うというのは辛いことさね。可哀そうな人。」
『カーラ、だったか。誘拐されたと聞いたが。』
ジニー・メイの瞳になんともいえない光が灯る。

「ブーンはまだそんなこと言ってるのかい?街の皆は彼女が逃げただろうって言ってるんだよ。」
『逃げた?』

ジニー・メイは、カーラがどれだけ田舎暮らしを嫌っていて、ニューベガスのような都会での暮らしに憧れていたか説明する。
サボテンの花のようだったと。見ている分には綺麗だが、近づくと・・・。

華やかな暮らしをしたいと思う人に、ここの暮らしはつまらなく映っただろうさね。
こよなく愛する街を侮辱されたと思ったのか、若い娘への嫉妬なのか。
ジニー・メイの、カーラへの思いがあふれ出て止まらない。

『わかった、わかった。他の皆にも話を聞いてみる。ブーンの思い違いの可能性が高そうだ。』
Vesprの言葉に満足そうな笑みを浮かべる。
じゃあ、私は家に戻るよと、ジニー・メイはモーテルを出て行った。

ブーンの話とジニー・メイの話とでは、印章が全く変わる。
とりあえずサンセットサルラパリラでも飲むかと自販機から一本取り出した。

ジニー・メイが座っていた受付の机を漁ってみるが、特に証拠を示すようなものは見つからなかった。

背後のロッカーにも目ぼしい物はなし。
ふと、足元を見ると、床に金庫が埋め込まれていることに気付く。

『・・・あの女、どれだけ貯めこんでるんだろうな。』
思わずニヤリとしながら、金庫の鍵を開ける。

キャップは、47枚。
想像してたより、ずっと少なく、思わずVesperは舌打ちした。
その他に、1枚の紙が出てきた。
契約書のようだ。

「売買契約書」と記載されている。


※Pip-Boyの見た目を変えるMod使ってます。腕につけずに小さな端末を持ち歩いてる。

『ビンゴ。』

ジニー・メイが、奴隷商人と交わした契約だ。
ブーンの妻であるカーラと、そのお腹の中にいる子供、2人を奴隷として買い取った証明書。

ここまでされるカーラという女は、どんな奴だったんだろう。
見る限り、この街はリージョンに搾取されているわけではなさそうだ。
ということは、ジニー・メイが率先してリージョンの奴隷商人と接触を図ったということだろう。

愚かだな。
一度でも奴隷を提供できると判断された町が、この後生き延びることができる保証などないのに。
そうまでしても、カーラという女性を目の前から消したかったのか。

『やれやれ・・・。』
そう呟くと、Vesperはジニー・メイの後を追いかけた。

辺りを片付けながら歩いているためか、ジニー・メイはまだモーテルの側にいた。
「おや、どうしたんだい。」
『あー、ちょっとアンタに確認して欲しいものがあるんだ。』
「こんな遅い時間に?」
『恐竜の前の空き地に見慣れないものがあってね。アンタなら何か知ってるんじゃないかなと。』
頼りにされていると感じたジニー・メイは、そうかいそうかいと笑った。

「そんなに言うなら見に行ってもいいよ。」

意気揚々と進むジニー・メイの隣を歩きながら、Vesperはベレー帽を被るタイミングを計っていた。

「ここかい?なにもありゃしないじゃないか。」
ジニー・メイが振り返る瞬間にベレー帽へと帽子を替える。

タンッ!
正確な射撃がジニー・メイの頭を撃ち抜いた。
さっきまでカーラのことをサボテンの花と称していた女の塊が足元に散らかっている。



恐竜の頭へと続く階段を上がりながら、ブーンの射撃の腕について考える。
あの場所から正確に頭を撃ち抜きやがった。
クソったれNCRの出身じゃなけりゃ、ニューベガスまで一緒に旅してもいいなと思う。
だが、退役しても第一部隊のベレー帽を被るような男だ。

『・・・無理だな。』

「・・・何故、あいつだと思った。」
眼下を見下ろしたまま、ブーンが話しかけてくる。

『こいつがあった。後生大事にとっておくなんてな。』
モーテルで見つけた「売買契約書」をブーンに渡す。
ちらと目を通すと、ぐしゃりと握りつぶしてポケットへとしまい込んだ。

『それで?アンタの気は晴れたのか?』

第一部隊のベレー帽を被り直すと、ブーンは唇を噛み締めた。
「・・・カーラが戻ってくるわけでもないしな。」
『ここを出て行く理由を探してたってことか。』

ブーンが手にしていたライフルを背負い、溜息を一つついた。

「もうここにはいられない。それはわかっている。」
『どうするつもりだ?』
「カーラを売りとばした奴は始末した。次は買った奴を見つける。リージョンを始末すること以外目的を見いだせないしな。」

ブーンは協力してくれた礼だと、幾ばくかのキャップを手渡し、また黙り込んでしまった。

『ま、アンタの腕ならどこでも買ってくれるだろ。気が向いたら、また来る。』
ブーンが片手を挙げて、それに応えた。



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