客が来そうにない寂れたバーと記念碑のようなものの前に男が1人立っているのが見えた。
Vesperが近づく足音を耳にして、振り返る。
「君も・・・誰かがここで亡くなったのかい?
『この記念碑はなんなんだ?』
男はNCR兵だと名乗り、ここボルダーシティであった激戦の様子を語る。
記念碑に書かれた名前を撫でながら、NCRレンジャー部隊がリージョンたちをおびき寄せて一斉攻撃した跡だという。
「兄が、その時に負傷した兵士を逃がすために犠牲になりました。」
煙草を吸いながら耳を傾けるVesperに、苦い笑いを浮かべた顔を向ける。
「リージョンたちは撤退しました。その裏で、どれだけの兵士たちが犠牲になったことか。」
NCRらしい話だ。
煙を吐き出しながらVesperは心の中で呟いた。
物量で押しつぶす戦い方しかできないのか、こいつらは。
兵士は休みを取ってカルフォルニアに戻るところだと言う。
『・・・そうか。邪魔して悪かったな。』
「いいえ。キャラバンと合流する予定が、いくら待ってもやって来ないので時間をつぶしていたところです。」
兵士と別れて人を探そうと歩き出した時、遠くから銃撃の音と怒号が聞こえてきた。
カーンズのやつらが紛れ込んでいると聞いたと兵士が話す。
NCRのモンロー中尉がいるから聞いてみると良いと、バリケードがあるほうを指した。
「待て、止まれ!一般人は立ち入り禁止だ!」
ノヴァックから戻る途中の部隊がカーンズに襲撃されたらしい。
増援要請を行ったものの、増援を待たずにカーンズに廃墟に誘い込まれて逃げ場を失っていると。
話を聞きながら、思わずVesperは舌打ちした。
「死者こそ出てはいないが・・・二人の兵士が捕虜になっている。」
膠着状態を打破するために何か手を打ちたいと考えているが、手を出すと人質の命が奪われる可能性が高い。
『・・・。ここにいるカーンズの奴らが、俺の荷物を持っている可能性がある。』
「なに?」
『中に入れる許可を出すなら、話を付けてきてやってもいいぜ。』
モンロー中尉がVesperを上から下まで視線を走らせ、深いため息をつく。
「本来なら・・・素性のわからぬお前のような人物の申し出は断るところだ。だが・・・」
背に腹は代えられない。
交戦地帯へ行って、カーンズと話し合ってくることを許可しよう。
モンロー中尉は、扉の鍵を開けて中へ進むよう促した。
中では、負傷したNCR兵たちとカーンズたちが睨みあっている。
人質は奥の廃墟に連れ込まれているらしい。
カーンズ達もこの状況をどうにかしたいと考えているのか、近寄ってくるVesperに向かって銃を向けることはなかった。
「俺たちはただレッドロックに帰りたいだけなんだ。」
「NCRがダムから増援を送って来なきゃいいが」
なるほど。
こりゃどちらから喧嘩を仕掛けたのか、わかりゃしねぇなとVesperは呟く。
モンロー中尉はカーンズに襲撃されたと言っていたが、カーンズ側に聞いたら違う話がでてくるかもしれねぇ。
『おい、お前らのリーダーはどこにいやがる。』
「Jessupなら、あの建物の中だよ。」
身動きが取れないカーンズ達は疲労が色濃く見える。
負傷したNCR兵も同じだ。
くそ、めんどくせぇな。
ちびた煙草を投げ捨てると、新しいものにまた火をつけた。
扉を開けると、薄暗い中でカーンズ達がひそひそと話し合っているところだった。
『おい。』
「なんだ、てめぇ!!」
突如現れたVesperに気付くと、ぎょっとした顔をする。
「お、お前はベニーが殺した運び屋じゃねぇか!!」
↓ 拍手 一押しいただけると中の人が大喜びします!※別窓開きます