
ぐるりと取り囲む塀の向こうに、高くそびえ立つホテルが見える。
NCRどもがカジノに骨抜きにされてるって言ったな。
ベニーは、Topsを経営している大物だとJessupが話していた。
そんな奴が何故運び屋の荷物を奪い取る?
思わず顔を顰めるVesperを見て、ヴェロニカが肩を竦めた。
「なんて顔してんの。どしたの?」
『・・・なんでもねぇよ。』
「・・・。」
『・・・。』
「NewVegasに折角行くんだから、もっと景気のいい顔しなさいよ!」
Vesperの尻を軽く蹴飛ばす。
どうやら元気づけようとしているようだ。
返事を待たずに、ヴェロニカがエルダー・マクナマラはVegasに入るためのパスポートをくれないから、いままで一度も訪れたことがないと愚痴り出した。
『エルダー・マクナマラってのは誰だ。』
「あ、ごめんごめん。今B.O.S.を率いている一番偉い人。」
ヴェロニカが、わざと渋い顔をして見せる。
その前のエルダーが自分の師匠だったと呟く。師匠の名前はエルダー・エリヤ。
ハイテク機器のスペシャリストで、研究熱心。改良して利用することを求めていたと言う。
そして・・・他のエルダーたちと意見が合わなくなってカリフォルニアからMojaveに送り出されたらしい。
Helios Oneという施設を見つけ、再起動しようとして果たせなかった。
大量のNCR兵に攻め込まれ、沢山の仲間が死んでいった。
エルダー・マクナマラがなんとか混乱をまとめて撤退したというのだ。
『おま・・・ヴェロニカの師匠はどうなったんだ。』
「それがね、行方知れずなの。」
『死んだんじゃねぇのか。』
ヴェロニカが首を横に振る。
死体が見つかっていないし、それに。
Helios Oneの通信室に残されていたエルダー・エリヤのノート。
そこには、B.O.S.は滅びる運命にあるが自分が戻ってきて救うつもりだと。
旧世界の偉大な宝を持ち返って、Mojaveを白紙に戻すと書いてあったというのだ。
『で、ヴェロニカもB.O.S.の中では変わり種ってことか。』
「ま、そういうことになるのかもね。」
辺りがすっかり暗くなった頃、ようやく門が見えてきた。
どこか休める場所を探さなくては。
無人の家なら、その辺にあるだろうしな。
門の側でボディガードがどうのと話をしている男たちの横をすり抜け、通りを進む。
「あ!」
ヴェロニカが指を指して急に走り出した。
「ここ!アポカリプスの使徒の拠点!来てみたかったの!!」
ヴェロニカのはしゃぎっぷりを冷ややかに一瞥すると、Vesperは建物の名前が書かれたプレートを眺める。
オールド・モルモン・フォート。
アポカリプスの使徒という名は、どこかで聞いたような気もしたが、はっきりとは思い出せない。
考え込むと、また頭の傷が疼くようだ。
『・・・くそったれ。』
「え?」
『なんでもねぇよ。ここはなんなんだ?』
「アポカリプスの使徒っていう、医療の知識や技術で街の人たちなんかを助けている組織よ。戦前の技術について話をしてみたいと思ってたの!」
興奮しているヴェロニカを余所に、建物の門を押し開け中へ。
白衣を着た人たちがあちこちで働いている。
テントの中には負傷者や酒の匂いをぷんぷんとさせた男たちが眠りこけている。
傍を通りかかったアポカリプスの使徒のメンバーが、2人に声をかけてきた。
「寝る場所を探しているなら、空いてるテントへどうぞ。」
『あ、いや、俺らは・・・』
「わ、ほんと!ありがとう!」
Vesperの言葉を遮るように、ヴェロニカが答える。
「もう遅いから、薬とかが欲しいなら明日声をかけて。」
そう言い残すと、自分の寝床へと立ち去って行く。
『仕方がねぇ、ここで休むとするか。』
久しぶりにベッドに横になり、ぐっすりと眠ることができた。
薬を買うことができるような口ぶりだったことを思い出す。
スティムパックやRad-アウェイあたりを買っておこうか。
ふらりと立ち寄ったテント。
ぼんやりと椅子に座っていた人物が、Vesperに気付いて声をかけてきた。
「やあ、医療サービスが必要なら、他の医師に言ってくれ。」
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