
声をかけてきた白衣の男性を見つめたまま、動かないVesper。
ヴェロニカが肩を小突いて、ようやく口を開いた。
『・・・あんたは、なんなんだ』
「私かい?しがない研究者だよ。タマサボテンからスティムパックを作ったりとか、そんなところだね。」
『・・・。』
「Vesper?どしたの?」
怪訝そうな顔をしてヴェロニカが横やりを入れる。
ちらりとヴェロニカへ視線を向けると、舌打ちした。
その反応にむっとして、ヴェロニカはテントから出て行く。
『ここのやつらは、医療援助の提供をしていると聞いたが。』
「まぁ、そうだね。」
『でも、アンタは研究者。』
医師は肩を竦めた。
「人助けの熱意はある。しかし、Nihil novi sub sole、だ。」
医師が聞き慣れない言葉を呟いた。
いや、聞いたことがある。俺はこの言葉が意味することを知っている。
何故だ。
『日の下に新しきものなし・・・か。』
医師が、おやという顔でVesperを見つめる。
「君もラテン語を解するのかい?この言葉はシーザー・リージョンに結び付けて考えられることが多い。」
『アンタはどうやって学んだんだ。』
机の上にある本を指さし、本やホロテープ、楽譜・・・あちこちにある欠片なんかから知識を得たと言う。
シーザー・リージョンの話が出たついでと言わんばかりに、医師はシーザーが元々アポカリプスの使徒のメンバーであったと教えてくれる。
『シーザーが?』
「そう。彼は古代のイメージに似せた新世界を再建したかったようだ。善意が腐っていった悲しい話だね。」
『・・・。』
『なぁ、一緒に来ないか。』
頭が良くて、医者で、シーザー嫌い。更に顔も好みだ。
誘わずにはいられない。
医師は苦笑いをして応える。
何故君と一緒に行かなければならないのかと。
『この地で生きていくためには、器量のいい医者が必要なんだよ。』(Confirmed Bachelor)
「ふふ。お世辞とわかっていても、悪い気はしないね。」
Vesperは心の中で思わずガッツポーズをする。
良い手応えだ。すぐにでも連れていって・・・。
「とはいえ、君はもう連れがいるだろう。彼女と話し合ってから、また誘いに来てくれ。えーと、君の名前は・・・」
『・・・俺はVesper。』
「私は、アルケイド・ギャノンだ。じゃぁ、またな。」
テントから出てきたVesperをヴェロニカが待ち構えていた。
「で?」
『あ?』
真っ直ぐにVesperを見つめるヴェロニカ。
思わす舌打ちして視線を逸らす。
溜息を一つつくと、ヴェロニカは先ほどの医師、アルケイドの話をする。
「あの先生と一緒に旅したいんでしょ?」
『は?何の話だよ。』
「旅したいんでしょ?」
じっとVesperを見つめて視線を外さない。
『・・・』
「で、私はお払い箱?」
少し悲しそうに呟くヴェロニカ。
『・・・クソッ。NewVegasでの居場所を見つけてやるから、それまではお前と旅してやるよ。』
ぱっと笑顔になり、思わずVesperの腹にパンチをする。
『!!おま・・・!!』
「あ、ごめんごめん!なんだかんだでいいとこあんじゃん、Vesper。」
『てめぇ、俺の事をなんだと思っていやがる。』
ヴェロニカとの旅も、なんだかんだで居心地は悪くない。
アルケイドを誘うのは、ベニーの野郎からチップを取り戻してからでもいいだろう。
『じゃ、行くか。』
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