
ひと際偉そうな態度で腕組みをした男が、2人をじろりと睨みつけた。
『請願ってのは、なんなんだ。何をしてもらえる』
ペイサーと名乗る男は、馬鹿にしたようにVesperを見つめた。
「何も知らねぇでここにきたのか。あの方にはどんなことでも可能だよ。」
Vesperの眉間に皺が寄る。
慌ててヴェロニカが割って入った。
「あ、あたしたち、初めてこの町に来て。だから、ご挨拶しようと思ってね。」
Vesperを睨みつけていたペイサーの表情が少しだけ和らいだ。
よくわかってるじゃねーかと言うと、ドアの鍵を開け中に入るように促した。
薄暗い部屋の中で舞台を退屈そうに見つめている男。
あれが・・・Kingか。
「おやおや。新顔か。Roxie、挨拶しな。」
2人をぼんやりと見上げる犬。
体が機械で・・・脳みそ・・・?
怪訝そうな顔で犬を見つめるVesperとヴェロニカに、すっかり年老いちまってねと犬を撫でながらKingが話す。
「で、私に何か用かな。」
『Strip地区に入りたい。』
Kingは肩眉を上げて、Vesperを見つめた。
『で、だ。パスポートでも信用調査でも、どっちでもいいんだが、俺たちにはどちらもない。』
「なるほど。」
『金になる仕事、もしくはパスポートを手に入れることができる伝手があるなら教えて欲しい。』
仕事ならあるとKingはVesperを面白そうに眺めながら呟いた。
「フリーサイドに入ってすぐの所に、ボディガードが居たのを見たか?」
『ボディガード?』
「あ、なんかフリーサイドは危ないからって言ってた人がいたような・・・。」
『・・・いたか?』
「いたよ!」
ヴェロニカとVesperの言い争いを手で制すると、Kingはいい商売だとは思う、と話す。
しかし。
「Orrisというボディガードだけが、稼ぎすぎるという報告があった。」
『稼ぎすぎるってのはどういうことだ。』
護衛するたびに悪党を殺す。
そして一度Orrisを雇った客は、次回以降Orrisしか雇わなくなる。
『それで、俺たちに何をやれってんだ?』
「Orrisを雇ってフリーサイド観光をするのさ。奴が何故ずっと指名され続けるのか、理由を探れ。」
『アンタんとこの部下でもいいんじゃねぇか?』
「我々はOrrisに顔が割れている。潜入捜査はできんだろ?」
「ま、そういわれたらそうね。雇うのにいくらくらいかかるんだろ・・・。」
費用は私が持つから安心しろ。
そう言うと、200キャップを手渡してきた。
すぐに戻るとKingに告げ、建物を後にする。
フリーサイド東ゲートにOrrisがいると言っていた。
オールド・モルモン・フォートを通り過ぎ、東ゲートへ。
ゲートのすぐそばに、アーマーをr着た髭面の男と観光客らしい人物がいた。
フリーサイドに辿り着いてすぐの記憶を辿ってみたが、Vesperには彼らがいたことを思い出すことはできなかった。
ほらいたでしょ?とベロニカは鼻高々だ。
2人が近づいてきたのを見て、髭面の男が声をかけてきた。
「フリーサイドを通行するなら、俺以上に安全を確保できる奴はいないぜ?どうだ?」
「え?なんで?」
「俺はプロだからな。」
ヴェロニカが無邪気に質問する横で、VesperはOrrisを観察していた。
Orrisはいかにフリーサイドが危険な場所であるか話す。
挨拶代わりにナイフをお見舞いする奴。中毒者。ゴロツキ。酔っぱらったNCR。危険な武器商人たち。
どうする?とヴェロニカがVesperに尋ねる。
料金は200キャップと畳みかけてきた。
一番腕利きのボディガードが欲しいなら、順当な値段だと自信ありげに話すOrris。
Vesperから料金を受け取ると2人に指示を出す。
俺の指示に従え。
寄り道はしない。
早めのスピードで移動するから遅れるな。
Vesperが不快そうに眉を顰めたのを見て、Orrisは馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
とっとと行くぞと言うと、走り出した。
オールド・モルモン・フォートを越えて
Kingsたちのアジトとアトミックラングラー
少し進むと、Orrisが急に立ち止まった。
「ちょっと待て。前のほうにいる奴らがきな臭い。他の道を行くぞ。」
そう言うと、2人を待たずに横道へと入っていく。
慌てて追いかけるヴェロニカの後ろで、Vesperは前方を睨みつける。
・・・誰もいやしねぇ。
路地に連れ込んで、金巻き上げるつもりか?
Orizに追いついた途端、3発の銃声が聞こえた。
ばたばたと男たちが倒れる。
「危なかったな。アンタが雇っていたボディガードが能無し野郎だったら命はなかっただろう。」
満足そうに話すOrrisを胡散臭げに見つめると、倒れている男たちの数を数える。
銃声は3発。
野郎どもは・・・4人。
Int6で見抜くことが可能
『・・・銃声は3。死体は4』
Orrisが一瞬ぎくりとしたような顔をした。が、すぐに表情を戻す。
「アンタは目と耳がいいな。俺は狙いを定めて後ろの奴も一緒に撃ったんだ。」
『・・・もしくは、アンタが宣伝の為に毎回こうやって芝居をうっているか、だ。』
OrrisとVesperが睨みあう。
「興味深い仮説を思いついたもんだ。だがな、誰にも言わないほうが良いぞ。信用をなくす。」
『それはどうだかな。』
南ゲートまではあと少しだ、遅れるなとOrrsが走り出した。
ヴェロニカに後を追わせ、Vesperは手早く死体を確認する。
※Medicine30以上で死体を精密に調べることが可能。
よくよく見ると、死んだふりをしているだけだ。
ご丁寧に血糊を用意して。
一度に2人を撃ち殺す腕があるなら、こんなとこでチンケなボディーガードなんてやってねぇだろ。
そう呟くとVesperはヴェロニカを追いかけた。
南ゲートへ辿り着くと、Orrisはまたフリーサイドを横断することがあった時は、誰を雇えばいいのかわかっているよな?と念を押して立ち去って行った。
戻ってきた2人を見て、Kingが嬉しそうな顔をした。
「で、どうだった?何か掴んできた顔をしてやがるな。」
『やつぁペテン師だ。でっちあげの襲撃を防ぐことで、旅行者の信頼を勝ち得ている。フリーサイドを訪問の際はOrrisをよろしくってこった。』
Vesperの話を面白そうに聞いていたKingの目が一瞬険しくなる。
「なるほどな。OK、OK。」
「どうするの?」
ヴェロニカの質問にKingが冷ややかに笑う。
「このシマにはペテン師は不要だ。どこかの路地で退場願おう。」
静かな口調でそう言うと、指を鳴らして部下を呼ぶ。
指示を出し終えると、穏やかな顔で再び2人に向き合った。
「君たちがなかなかデキるやつだってことはわかった。」
『・・・どうも。』
「そこで、もう少し重要な問題を手伝って貰おうと思う。」
「難しい問題?」
Kingが頷く。
Strip地区が出来てから、人の出入りが激しくなり、元々フリーサイドにいた人々は苦々しく思っている。
それに加えてNCRまでやってきた。
NCRは、ここを守るためだと正義面している。
そして、我々たちに不快に思われていることに我慢ができないようだ。
「そのせいで、時々暴力沙汰になることもある。」
『目に浮かぶぜ。』
Vesperは呆れたように肩を竦めた。
「最近、私の友人の一人が襲撃された。誰が犯人か調べて欲しい。」
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