Also A Deram...

月: 2021年2月

めぐる めぐる

温泉で骨休めをした闇の一党のメンバー。
中でもDiyaabはかなり右足の調子が良くなったと感じでいた。

完全に仕事に復帰するには、まだ時間がかかりそうだが・・・荷物にだけはならないようにしようと日々リハビリに励んでいる。
そんな折、ナジルが以前身に纏っていたマントと同じものを手にやってきた。
「そろそろ、いいんじゃないか?」
「・・・。」
「いつまでも商人風の男が、この場所に出入りしているのもおかしいだろう。着替えておくんだな。」

やれやれ、と溜息をつき服を着替えることにしたDiyaab。
ついでに伸びきった髪と髭も整えておくか。
白くなってしまった髪は元には戻らないが、以前と同じように短くし髭も剃り落とす。

足の調子も悪くないし、シャドウメアで遠出してみるか。
シセロとLadyに声をかける。
「・・・!聞こえし者!!」シセロが目を大きく見開いて、Diyaabを見つめる。
「前と同じだ!戻ったんだね、聞こえし者!」
大喜びしてシセロはその場でステップを踏む。

「・・・まて、シセロ。足は完治していないし、目も戻らん。」
「それでも、少しずつ良くなってきてるじゃないか!嗚呼、母よ!シセロの願いを聞いてくださったんだね!」
嬉しそうにLadyと共に、ドーンスターの聖域を飛び出していく。



シャドウメアに跨り、山中の小さな家へと向かう。
ここへ来るのも久しぶりだ。

静寂に耳を傾け、景色を無言で眺めるDiyaabをシセロがじっと見つめている。
「・・・なんだ?」
「すごくすごくシセロは嬉しいんだ!母が願いを叶えてくださった!」
「・・・一体何を願ったんだ。」

シセロが急に、ぐいと体を近づけてきた。
思わず身を引くDiyaab。

足に痛みが走る。足を庇おうとした時、強い風が吹き体がよろめいた。そのまま、高台から足を踏み外す。
まずい。

「聞こえし者!!!!」



どのくらい時間が経ったのか。
幸いにして雪がクッションとなり、大きな怪我をしなくて済んだようだ。
Diyaabを助けようと、シセロが手を伸ばしてきたところまでは覚えている。そうだ、シセロはどうした。
立ち上がろうと手を着いた時、シセロの服の端が見えた。

慌てて雪を掘り、シセロを助け出す。顔に無数の擦り傷が出来ているが、多量の出血は見当たらない。
「おい、シセロ。」頭を打っている可能性を考え、揺すらずに声をかける。
目を覚ます気配がない。気を失っているのか・・・。

Ladyの遠吠えが聞こえた。シャドウメアとLadyを呼び寄せる。
シセロを抱きかかえ、シャドウメアの背に乗せると一路ドーンスターの聖域を目指す。

「・・・シセロ大丈夫かな?」
「バベット、薪をもう少しくべて火を強くしてくれ。」

傷だらけになりながらシセロを抱えて戻ってきたDiyaabから、ナジルがシセロを引き取りベッドへと寝かせる。
濡れて冷え切った体をまずは暖めろとナジルが言う。

服を着替えシセロの元へ戻ろうとすると、部屋から叫び声が聞こえてきた。

「ここはいったいどこだ!!!!俺は何故こんな所にいるんだ!」
「シセロ、落ち着け。一体どうしたんだ。」
周りを疑い深い目で見ながら、叫ぶシセロ。
落ち着かせようと声をかけるが、聞く耳を持たない。

ベッドから立ち上がり逃げだそうとしたが、足首を捻って倒れこんでしまった。
手を貸そうとすると、振り払われた。
ぎらぎらと怒りに燃える瞳で憎々し気にDiyaabを見つめる。
Diyaabの知っているシセロの姿ではない。これは、一体誰なんだ。

「俺は、シェイディンハル聖域で夜母を守っていたんだ!うるさい、うるさい!俺を笑うな!!」
以前に見たシセロの日記を思い出す。シェイディンハル聖域。ファルクリースの聖域へ来る前にいた場所だ。

「・・・シセロ。ここはSkyrimだ。Skyrimのドーンスターの聖域だ。」
「Skyrimだと?何故そんな田舎に俺が来なければならないんだ。お前は一体誰だ?!」
「・・・俺は、聞こえし者だ。」

Diyaabが聞こえし者と名乗った瞬間、シセロが飛びかかってきた。
思わず手にしたナイフを叩き落し、床へシセロを押し倒す。
「離せ、この野郎!お前もラシャのように聞こえし者を騙るのか!母に対する何たる侮辱!」

騒ぎを聞きつけナジルが駆け付けてきた。
「どうしたんだ!?」
Diyaabとシセロを引き離し、何が起こったのか話を聞く。

どうやらシセロは高台から落ちた時の衝撃で、少し前の記憶を失っているようだ。
ナジルはワインをシセロに飲ませ、ひと眠りさせることにした。
眉間に皺が寄ったまま、眠りに落ちて行くシセロ。
Diyaabとナジルは顔を見合わせて溜息をつく。
「一時的な混乱状態だとは思うが。」
「・・・しばらく様子を見ることにする。皆に危害を加えないよう、俺が見張ろう。」



シセロの元へ戻ると、着ていた道化師の服を脱ぎ棄て暗殺者の鎧に着替えていた。
こちらを睨みつけると、道化師の服をナイフでずたずたに引き裂く。
「おい、何をしている。」
「うるさい、うるさい、うるさい!頭の中で嗤うな!お前は俺が殺しただろう!」
そうか。日記にも書いてあった。最後の仕事で殺した道化師の笑い声が聞こえてくる、と。

「聞こえし者。」

シセロが呼んだ。
驚いて顔を上げると、うっすらと瞳に狂気の色。
「シセロ・・・?」
「うるさい!!!」
そう叫ぶと、シセロは部屋を飛び出していく。

慌てて追いかけると、シセロは夜母の前で足を止めた。
「母よ・・・何故ここに?ここはシェイディンハルではないはずだ。母よ・・・。」
夜母に縋りつく。

Diyaabが後ろから近づいてきたことに気づくと、足を掬い転ばせ、馬乗りになる。
手には愛用の短剣。絶望と怒りと狂気を滲ませた瞳でDiyaabを見つめる。
「シセロ。」
「うるさい!!聞こえし者を騙る輩は俺が許さん!俺は奪いし者だ!」
「お前は・・・守りし者だろう?」

瞳が揺れる。
「母は」
「何故俺の声に応えてくれないんだ。何故だ、何故だ、何故だ!!」
短剣が手から滑り落ちた。かしゃんと音がしたが、気にも留めず母への言葉を口にし続けるシセロ。
ふいにシセロが笑い出した。
瞳には大粒の涙。流れ落ちる涙をそのままに、笑い続ける。
「母よ!愛しき母よ!シセロは・・・シセロは、貴方の声を聞かせて欲しいだけなんだ!」

夜母よ、シセロを再び苦しめなくてもよいではないか。そうじゃないか?
Diyaabは腹の中で思わず独り言ちたが、夜母からの返事はない。
夜母よ。あんたは残酷だ。

「シセロ。」
涙でぐしゃぐしゃになった顔をDiyaabへと向ける。
「聞こえし者ぉ。どうして母はシセロの問いかけに答えてくれないんだ?どうして、シセロじゃダメなの?」
手を伸ばすと、シセロが胸に倒れこんできた。
抱きかかえるような形で背中を撫でてやる。しゃくりあげる声が聞こえる。まるで・・・子供だ。

「シセロ。夜母は、お前の献身をちゃんとわかっている。お前の事を愛している。」
「どうしてシセロに話かけてくれないんだ?どうして?」
「そうだな・・・。」シセロを抱きかかえたまま、考える。
あれこれ逡巡していると、シセロが立てる寝息が聞こえてきた。
やれやれ・・・。

ゆっくりと身を起こすと、シセロを抱きかかえベッドへと運ぶ。
ナジルに、道化師の服を探してもらうか。それとも、このまま暗殺者の鎧の方がいいのか?
そんなことを考えながら部屋を出ようとした時、マントの裾を掴まれた。
振り向けば、シセロがベッドの中からDiyaabを見上げている。

「・・・どうした。」
「聞こえし者が無事でシセロは嬉しいよ。」
先ほどまでいた、狂気に飲み込まれていくシセロは姿を消したようだ。

「ゆっくりと眠るがいい。」
満足そうな吐息をつき眠りに落ちて行くシセロを、Diyaabはいつまでも見つめていた。

闇の一党 湯けむり慰安旅行

沢山の傷を負ったが、Skyrimに戻ることができたDiyaab。
少しづつ体力を取り戻し、リハビリでも開始するかとナジルと話し合う。

それにしても、ドーンスターの聖域は寒い。
強張った筋肉がなかなか緩まないな、と溜息交じりに呟く。

そんな話を聞いていた新人が、ウィンドヘルムの南にいい保養地があるらしいですよと教えてくれた。
なんでも狩人たちや動物が温泉に浸かって傷を癒しているという。
「温泉か・・・。そういえば、そんな話をどこかで聞いたことがあるな。」
「私行ってみたい!」バベットが諸手を挙げて賛成した。
ナジルがバベットとDiyaabを見比べて、ふむと言う。

「よし、お前とシセロで先に行ってくれ。私とバベット、新人たちは日が暮れたら落ち合うことにする。」
「わかった。シセロ!」Diyaabが呼ぶと、花を手にシセロが飛んできた。
「呼んだかい?聞こえし者」
「ウィンドヘルムの南にある保養地に皆で行くことにする。聖域も落ち着いたし、皆の慰安というわけだ。」



鼻歌を歌うシセロと、久々の遠出が嬉しいLady。
Diyaabは商人風の服装のまま現地へ向かうことにした。
足の悪い商人と、その従者という体でいくからなとシセロには説明した。
故郷から戻ることはできたが、まだ油断はできない。暫くの間は一般市民を装うことにすると決めた。

「あそこだね、聞こえし者!」シセロが歓声を上げた。

日が陰り出してきたため、保養に来ていた狩人たちは引き上げるようだった。
ふらりと現れた商人とその従者の姿を見て、親切にも声をかけてきた。
「あんたたち、保養に来たのかい?暗くなるから気を付けろよ。」
「ああ、ありがとうよ。妻がこれから来るはずだから、灯りを点けておきたいと思うんだが・・・。」
「じゃあ、このランタン使ってくれ。俺たちは、辺り慣れているから。」

シセロに持っていたランタンを渡し、狩人たちは帰って行った。

「聞こえし者、妻って?」ランタンで辺りを照らしながらシセロが聞く。
「ん?ナジルたちが来るだろ。灯りを点けておく口実だ。」
ふぅんと面白くなさそうに呟いて、シセロは背を向けた。

辺りが暗くなってきた頃、ナジルやバベット達が到着した。
バベットは初めて見る温泉に大はしゃぎだ。
「随分と荷物が多いな。」見れば新人たちが大きな籠を抱えている。
ナジルがにやりと笑った。
「慰安だからな。途中で酒や食べ物を調達してきた。今日はゆるりと楽しもう。」

新人とシセロで辺りを探索し、狼や巨人なんかを倒す。準備は万端だ。

傷ついた体を温かい湯に漬けると、思わずため息が出た。
ナジルもバベットも新人たちも満足そうだ。
エールを飲み、焼いた肉を食べる。ああ、五臓六腑に染みわたる。

湯の中で、右足の筋肉を揉み解す。やはりまだ痛みがあるな・・・。
そう思っていると、シセロがDiyaabの腕や背中をマッサージし始めた。
「お、おい。やめろ、シセロ!」
「早く治って欲しいんだよ、聞こえし者。右ひざ周りもストレッチしようか。」
慌ててシセロを止めようとするDiyaabに、バベットが笑いながら声をかけてきた。
「シセロはね、早く一緒に仕事がしたいのよ。だから一生懸命マッサージの仕方とか覚えたのよ。」
見ればナジルもにやりと笑いながら、こちらを見ている。

そう言われてしまうと、止めることができないじゃないか・・・。
大人しくシセロに任せることにした。

ふと目を上げると、オーロラと大きな月。

「私、今日の事忘れない。」
「バベット、また来ればいい。なぁ、Diyaab?」

皆のためにも、早く体調を戻さないとな。
「その通りだよ、聞こえし者!」蜂蜜酒を飲んでご機嫌になったシセロの叫び声がこだました。

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