囚人たちが占拠していると聞いたが、辺りを見回しても、それらしい人物たちは見当たらない。
荒らすだけ荒らして、立ち去った後なのだろうか。
Mojave Expressの看板を掲げた建物の前に、力なく座り込んでいる人影が見える。
確認しようと足を踏み出した時、銃声と笑い声が聞こえてきた。
「また獲物がきたぞ!」
「死ねや!!」
崩れ落ちた脱獄囚の一人は、NCRレンジャーのアーマーを身に着けている。
NCRレンジャーが脱走して加わった・・・というよりは、NCRの兵隊の身ぐるみを剥いだのだろう。
『なんとも情けねぇな。』
それにしても。
脱獄囚たちはどこにいやがるんだ?
外にいないということは、立て籠っているのか。
見る限り、「Vikki & Vance」か「Bison Steve Hotel」のどちらかの建物にいるんだろう。
Mojave Expressの老人が生き残っているのか、一抹の不安を胸に、まずは「Vikki & Vance」のドアを押し開ける。
「止まれ、若造!」
暗がりの中で老人が銃を構えたままVesperを制止する。
「今、この街は暢気に賭け事を楽しめるような雰囲気ではないぞ。すぐ引き返すんだな。」
『いや、俺は・・・』
「・・・?ん?お前・・・運び屋か?」
ジョンソン・ナッシュと名乗る老人は、背後で警戒していた住民に合図する。
脱獄囚ではないという事がわかると、三々五々と散らばって行った。
ナッシュはタバコの火を点け、煙を見つめていた。
「で、お前何故ここにいるんだ?仕事はどうした?」
『あー、あんた、俺のこと知っているんだな。』
ナッシュが怪訝そうな顔をした。
Vesperはグッドスプリングスで頭を撃ち抜かれ、死にかけたところをヴィクターとドック・ミッチェルに助けられたことを話す。
「で、その影響で記憶があやふやになっちまったと。」
『・・・。ここのことは、なんとなく覚えてる。アンタのことも、多分覚えている。』
「そうか。あんたから預かっている荷物がある。記憶を取り戻す助けになるかもしれん。」
『荷物?俺が、あんたに預けていったってことか?』
ただ、荷物はMojave Expressの建物の中に隠してあるから、今は取りに行けないとナッシュ。
Vesperは記憶を探るように思いを巡らせてみたが、ナッシュに何を預けたのか全く思い出すことができなかった。
チェックのジャケットを着た男のことを聞くと、ナッシュは少し考え込み、近くにいた老婦人を呼び寄せた。
「高そうなスーツを着た男が通りかかって話、なんかあったな?」
「ええ、カーンズのやつらと一緒に通りかかったとか言ってたわね。保安官代理の方が詳しいんじゃないかしら。」
「ああ・・・彼か・・・。」
脱獄囚たちは、Bison Steve Hotelに立て籠っていて、保安官代理はそこに潜伏している。
保安官代理ということは、保安官はどうしたんだ?
そう聞くと、保安官は脱獄囚がプリムに襲い掛かった時に、街を守ろうとして死んだ、と暗い声でナッシュが答える。
代理と言っても、ね。とナッシュの妻ルビーが呟いた。
なるほど。
保安官代理の力はあまり期待しないほうが良さそうだ。
『仕方がねぇ。保安官代理に話をきいてくる。その後で俺の荷物とやらを返してくれ。』
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