
記憶の中で微笑む女の事を考えようとすると、こめかみに痛みが走る。
頭を撃たれたとドックミッチェルは言ってたな。
くそったれ。
あいつ、あの女とは・・・どこで出逢ったんだ?
どうして、あのチェックのスーツの男に荷物を奪われたのだろう。
そういやあの女は、どこへ行った?
ヴィクターもドックミッチェルも、他にも埋められたりしてたやつがいるとは言ってなかった。
俺が襲われる前に、逃げたんだろうか。
思い出そうとすればするほど、頭の痛みが強くなる。
Vesperは考えることを止め、眠りへと落ちていった。
翌朝。
硬い簡易ベッドで寝たせいで、体が軋む。
『くそ、いててて・・・。次はちゃんとしたベッドで寝るぞ・・・。』
ここから、もう少し南へ進めばニプトンがあるはずだ。
死体と一緒に寝るような真似はもうしなくていいだろう。
そこから北へ向かえばノヴァックか。
早いとこ追いついて荷物を取り戻したいが、砂漠を越えるのは止めておけと言われたしな。
そんなことを考えていると、ロボットがBeep音を立てて何かに突進していった。
バークスコルピオンやファイアーアントを倒しながら進む。
砂漠を横断する道と、山へと向かう道の分岐点でトレーダーの一行に出会った。
「よう、入用なものはないか?」
水や銃弾を補給しながら付近の話を聞く。
『山の上に見える、あのでけぇ像はなんだ?』
男は笑いながら、視線を山へと向ける。
「あそこはNCRの前哨基地だよ。NCRとデザートレンジャーが握手してる像らしいぜ。」
『・・・ほんとクソみてぇなことしかしねぇな。』
Vesperは足元に唾を吐き捨てる。
「俺たちはニプトンまでは行かないから詳しいことはわからんが・・・。」
『なんだ?』
「NCRの偉い奴らが、ニプトンがどうの、煙がどうの言ってたのを聞いた。」
『煙?襲撃にでもあったのか?』
さぁな、と男は肩を竦める。
砂漠を歩くなら、これも持って行けとサンセットサルサパリラを投げてよこしてきた。
前哨基地には酒場もあるし、武器防具も売っている、修理屋もいるらしい。
トレーダーは親切にそう教えてくれたが、VespaerはNCR兵が屯する場所へ行く気にはなれなかった。
『とっととニプトンを抜けるとする。』
「そうか、気を付けてな。」
廃屋を住処にしていたジャッカルギャングを片付け・・・
遠くに街並みが見えてきた。
確かに、黒い煙が立ち上るのが見える。
ギャングどもに襲撃されたのか?
辺りの様子を窺っていると、笑い声を上げながら男が走ってくることに気付いた。
咄嗟に銃を構える。
「クソったれ!俺はクジに当たったんだ!」
「この空気の匂い!まるで酒を飲んでいるいるようだ!」
「自由の匂いだ!」
Vesperを見ているようで、どこにも焦点が合っていない。
クジとはなんだと聞いてみたが、クジはクジだよ、このまぬけ!とまるで会話にならない。
そして、笑いながら砂漠の方へと走り去って行った。
街の入り口を見ると、人の頭が刺してあった。
レイダーだろうか?
・・・それとも・・・?
『・・・嫌な予感しかしねぇな。』
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