Wasteland3 Cornered Rats

2024年7月14日 Feriz

警察署の中に足を踏み入れると、受付で言い争いをしている声が聞こえてきた。
クォンが渋い顔をしたのをZephyrは見逃さなかった。
どうやら、警察官に言い募っている若い女性を見知っているようだ。

受付の警察官は、Wraithたちが入ってきたことに気付き、少しほっとした顔をした。

「どうしましたか？」
『ああ、我々は・・・。』

警察官に自分の訴えを蔑ろにされたと感じた女性は、Wraithを睨みつける。
「貴方たちは何？貴方たちは捕まる側の人間に見えるわ。保安官に用があるとしても私が先よ！」

『・・・君は、いつもそんな風に見知らぬ人にも噛みついているか？』

女性は、言い過ぎたと素直に謝る。
「ごめんなさい。失礼だったわ。でも、私の家族がクソったれなドーシー一家に捕まっているのに、保安官は何もしてくれないのよ！どうしてなの！！」
Wraithがちらりとクォンを見る。
溜息をつきながら肩を竦めると、クォンは受付の警察官へ声をかけた。

「デイジー保安官はいるかい？」
「ああ、元帥。お待ちしてました。レンジャーの皆さんのことも。」
「ちょっと待って！私の家族の事はどうなるの！？」

クォンが女性へと向き直る。
「お嬢さん、我々は総主教に依頼されて保安官の手伝いをしにきたんだ。それが終わったら思う存分訴えることができるよ。」

思わず絶句した女性はWraithとZephyrに向き直る。
『そもそも・・・君は誰なんだ？』
「わ、私はルシア・ウェッソン。私の家族はコロラドスプリングスの有力な一族なのよ。総主教の長年の同盟者なのに、こんな、こんな仕打ちを受けるなんて。」

「なぁ、保安官の話を聞くときに、こいつの家族の事も聞いてやれないかな。」
ZephyrがWraithに訴える。
2人を交互に眺めた後、Wraithはクォンに視線を走らせた。
視線の意味を感じ取ったクォンが、やれやれと溜息をつく。
「・・・わかったよ。保安官に聞いてみるといい。」

大きな机に地図を広げ、部下と思しき人物とあれこれ話し込んでいる人物がデイジー保安官。
近づいてくる足音に気づき顔を上げる。

「デイジー保安官」
「ああ、クォン。来たわね。それにレンジャー部隊も。」

デイジー保安官はてきぱきと現在の状況について説明する。
ドーシー一家の襲撃があったが、撃退した。しかし人質を取って「神の庭」に立て籠っている。
レンジャー部隊には「神の庭」へと赴き、ドーシー一家と話をしてきて欲しい。
どうやって街へ潜り込んだのかがわかるかもしれない。

「それは、つまり。」
クォンが口を挟む。
「クソどもを撃ち落として、人質を救出せよ、ということですね？」
保安官がクォンに向かって頷き、レンジャー部隊の面々を見据える。

私からは以上よ、と言う保安官に、Zephyrが受付で待ち続けていると言うルシア・ウェッソンの話を持ちだした。
皮肉そうな笑みを浮かべて、あの叫び声が聞こえていないとでも思うのかと語る。

「・・・でも、そうね。あのこを連れて探索に行ってくれたら、こちらも助かるわ。」
『どういうことですか？』
「あの一家はコロラドスプリングスの名家でね。あまり無碍にもできないんだが・・・今の状況で、あのこの話ばかりを聞いているわけにはいかないんだよ。」
『なるほど。彼女は、戦い方を知っているのですか？』
デイジー保安官は頷く。
銃の扱いは心配はいらない、ただ、実戦の経験については・・・。
『わかりました。彼女が希望するなら、一緒に「神の庭」へ行きましょう。』

「やつらのケツをちょっと蹴飛ばしてきな、レンジャーズ！」