
冷たい潮風を感じながら、ペイルの野営地へと馬を進める。
この辺りは流石にリディアも不慣れなようで、緊張した面持ちで後ろをついてくる。
小高い丘の上に煙が見える。
野営地はあの場所か。
弓の稽古する兵士や刀を研ぐ鍛冶屋を後目に、リッケ特使が待つテントへと急ぐ。
Luciusが近づく足音を聞きつけ、顔を上げると特使は手を挙げて迎える。
リッケ特使:来たな
Lucius:テュリウス将軍よりここへ向かえと
リッケ特使:ドーンスターの首長が辺りを憚らずストームクローク寄りであることを豪語してる
Lucius:ほう。
リッケ:ストームクロークからドーンスターへ指令書が運ばれるという情報を得た
その情報を入手し、嘘の指令書と差し替える。
その任務をLuciusに託してきた。
リッケ特使は片頬に冷たい笑みを浮かべる。
特使のテントから戻ってきたLuciusをリディアが迎える。
リディア:従士様、特使はなんと?
Lucius:ドーンスターへ運ばれる予定の指令書を奪い取って偽物と差し替える
リディア:ストームクロークの使者を探し出す必要がありますね
Lucius:ナイトゲートかウィンドヘルムにいるらしい。まずはナイトゲートから調べようと思う。
そう言うと、馬に飛び乗り雪山を駆け下りる。
ナイトゲートは、先日ウィンドヘルムへ向かう途中に立ち寄った宿屋だ。
あの時は、酒飲みの老人と宿屋の親父しかいなかったのだが。
ナイトゲートの建物が見えてくると、Luciusはリディアに馬から降りる様に指示を出した。
離れた場所に馬を止め、歩いて近づく。
相変わらず静かな場所だ。
この場所を馬で訪れたような気配はない。
大勢で歩き回ったような足跡も見当たらない。
使者は1人なのか。それとも、ここにはないのか。
静かにナイトゲートの扉を押し開ける。
宿屋の中を見ると、ストームクローム兵が1人暢気に酒を飲んでいる。
Lucius達が入って来たことには気づいていないようだ。
運の悪いことに、宿屋の親父がLuciuとリディアのことを覚えていた。
炉で温まるように声をかけてきたのだ。
Luciusが小さく舌打ちする。
親父の声かけを聞いてストームクローク兵がこちらに気付いてしまった。
見知らぬ人物が自分に向かってくるのを見て、少し身構えた。
宿屋の親父の視線を遮るように、そっとリディアが兵士の背後に廻る。
兵士は酔いが少し回っているのかリディアの動きには気づいていないようだ。
ジョッキをLuciusに向けて、俺は暇ではないのだと声を荒げだした。
ストームクローク兵:俺は忙しいんだ。時間がない、どいてくれ
Lucius:その指令書のことで話が
ストームクローク兵:なんだ?お前指令書の事を知っているのか?
Lucius:ああ。大きな声では言えないから、こっちへ
Luciusの方へと体を傾けた。
宿屋の親父が背を向けた瞬間、兵士の口を塞ぎ、腹に鋭いダガーを突き立てた。
ダガーを一捻りして止めを刺すと、その身を椅子に座らせる。
使者の胸元漁ると指令書が見つかった。
リディアに渡すと、Luciusはストームクローク兵に肩を貸すような形で抱き上げて、外へ連れ出すふりをした。
宿屋の親父が怪訝そうな顔をしたが、面倒ごとには関わりたくないようだ。
肩を竦めただけで、酒場の帳簿付けに戻っていった。
ストーククローク兵の死体をナイトゲートの前にある池に沈める。
剣や弓、防具の重さで浮かんでくることはないだろう。
離れた場所で待ってる馬に乗り、一路ペイルの野営地へ。
持ち帰った指令書をリッケ特使へと手渡す。
ダンスタッド砦の応援要請のようだ。
リッケ特使が内容を書き換えたものをLuciusに託した。
リッケ特使:これをドーンスターにいるストーククローク兵に渡すんだ。
Lucius:はっ
リッケ特使:ドーンスターはストームクローク寄りだが、そのままの姿で向え
Lucius:変装せずに指令書を手渡せと?
リッケ特使:そうだ。敵に扮していると、そう言えばいい
なるほど。敵に扮して、敵の情報を手に入れてきたと、そう言えということか。
リッケ特使に向かって頷くと、身を翻し駆け出す。
ドーンスターにいるストームクローク兵 フロークマル・バナー・トーンは首長の屋敷の中にいた。
ストームクロークの鎧を身に着けていない使者がやってきたことに、疑いの目を向ける。
ストームクロークの装備を捨てることで敵の目を欺いたと言うと、フロークマル・バナー・トーンはいい考えだと頷く。
リディアが少しだけ苦笑いをする。
Luciusから偽造した指令書を受け取ると、早速内容を確認する。
中には、ダンスタッド砦への増援と帝国についての情報が書かれている。
フロークマル・バナー・トーンは満足の笑みを浮かべると、Luciusを労わった。
酒場で一杯やっていけと、褒美として幾ばくかのゴールドを手渡してきた。
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