Fallout NewVegas~Lucky Strike

JessupがVesperの顔を見て青くなる。

「お、お前あのとき頭を撃たれて死んだはずだろう!」
『ああ?』

あの夜の
あの瞬間が蘇る。

咥えていたタバコを捨て、足で踏み消すと、苛立たし気に新しい煙草に火をつけた。
『ああ、思い出したぜ。お前、あの時俺の墓穴を掘ってたやつだな。』

Vesperが手を差し出す。
それが意味することを、すぐにJessupは察したが、首を横に振った。

「ここにはねぇよ。」

プラチナチップはベニーが盗んだと言う。
あいつ裏切りやがったんだと怒りを露わにするJessupとその手下どもを冷たい目で一瞥する。

なんてこった。
また、ベニーの野郎に逃げられた。くそ。くそっ。
Strip地区へ行くしかねぇな。

「プラチナチップを取り戻すためだけに、ここに来たのか?」

ああ、そうだった。
NCRのくそったれに頼まれたことを思い出す。
『いや。それもあるが、アンタらここから出たいと思わねぇか?」
「NCRのやつらが引き下がれば、俺たちだってとっととこんな場所から立ち去るさ!」

周りのカーンズ達も、そうだそうだと同意する。

『OK。お前らがNCRの人質を無事に逃がせば、NCRもお前らに手を出さないと約束させてやってもいいぜ。』
Vesperの言葉にJessupが一瞬逡巡した。
しかし背に腹は代えられない。
人質を逃がすことに同意した。

手下にNCR兵を逃がす様に指示すると、Jessupはポケットから何かを取り出しVesperに投げてよこした。

『なんだ、これは。』
「ベニーのライターだよ。あの夜使っていたライターだ。あいつを捕まえたら、ケツにぶち込んでやれ。」

見ると何やらマークが入っているようだ。
これがベニーのものだと証明する印なんだろうか。
ポケットに仕舞い込むVesperを見てJessupが頷く。

「撃ちあいにビビってる訳じゃねぇが、俺らだって出来れば体に風穴開けずにレッドロックに帰りたいんだよ。」
『そんなこた、どうでもいい。それにしても、お前らとベニーは一体何故手を組んだ?』
Jessupが痛いところに突かれたとでも言わんばかりに顔を顰めた。

「あいつは、Vegasのカジノ Topsを経営する大物だ。Vegas地区にいる俺の知り合いからデカイ仕事があると連絡が入ってね。」
『そのデカい仕事ってのが、これか。』
「結果としては、そういうことだ。」

運び屋から荷物を取り戻す、そんなようなことを言っていたらしい。

ベニーは最初からVesperが目当てのものを持っていることを知っていたらしい。
何故だ?
俺は、あの荷物を・・・どこで受け取った?

「そういや、あのチップを女が盗み出そうとしたこともあったな。」
『・・・女?』

なぁ?とJessupが近くにいる手下に声をかける。
Vesperを墓に埋めた後、どこからともなく女が現れたという。
ベニーとは知り合いのようだったと。

道中ずっと女と一緒だったが、女がボルダーシティ近くでプラチナチップを盗んで逃げようとしたらしい。
ベニーの情婦かと思ったけど、違ったみたいだなとJessupは言う。

『その女は、どうなったんだ。』
「さぁ?ベニーがどうにかしたんじゃねぇか。」

腹の奥がざわざわとするのを感じる。
どういうことだ?

頭がぐるぐるとし出した。
くそっ。どこかで落ち着いて考えねぇと。

『・・・兎に角。NCRの人質がそろそろ外に出たことだろう。てめぇらも逃げな。』
Jessupが手下たちに撤退を指示したのを見届け、Vesperも建物を後にした。



逃げるカーンズ達を後目に、モンロー中尉への元へと戻る。
礼を言う口調がなんとも歯切れが悪い。

上層部から、カーンズ達を一掃せよと命令が出ているらしい。

『てめぇ、簡単に約束を破りやがるな。あぁ?』
煙草の吸殻をモンロー中尉の足元に投げ捨てる。
クソったれ。

『カーンズのことなんざ知ったこっちゃねぇが、騙されて黙っていると思ってるなら、今すぐ思い知らせてやるよ。』
腰の銃に手を伸ばす。

「いや、お前を騙すつもりなど」
『じゃあ、約束を守るよな?NCRのお偉いさんよ?』
モンロー中尉は目を伏せて考え込んでいたが、意を決したように顔を上げた。

「お前の言うとおりだ。カーンズは自由に行かせよう。」

モンロー中尉を一瞥すると、VesperはStrip地区へと急ぐ。
早くベニーの野郎に追いついて、チップを取り戻す。ついでに女の話もはっきりさせねぇとな。

Pip-BoyでStrip地区への道程を確認する。

ふと、顔を上げると、そこにビクターがいた。

「いよう、相棒。奇遇だなぁ。」



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