冷たい雨が降るシアトル。
久しぶりに戻ってきた。
タクシーに乗り込むと、サムの居場所を示す信号を追いかける。
車はスラムを進み、たどり着いたのは・・・Organ Grinders。
ここは、生きたもの、死んだ者に関わらず体の一部を解体する店だ。
借金を負ったものならば自分の臓器を売りに出し、死体を始末したい人間ならば小銭を稼ぐこともできる。
建物の中に入ると、死と腐敗の臭いがどっと押し寄せる。
わずかにするミントの香りが、臭いを消そうとしていることを伺わせた。
建物の奥へと進むと、ドワーフが一人死体に覆いかぶさるようにして、仕事をしているのが見えた。
足音に気づくと顔を上げる。
ドワーフはにやりと笑った。
「この時間に訪問者があるとは。何の用かな?」

『あんた・・・検視官か?』
「まぁ、そうともいうね。私は、ジョン・ドレスデン。Organ Grindersの支店長で、この地域の検視官。で、君は?」
『俺は、Rook。サム・ワッツという男の・・・代理人のようなものだ。彼の殺人事件を調査しに。』
ドレスデンは顔を顰めた。
死んだ男が依頼人?何故ここに来たんだ?
確かに、奇妙な話に聞こえるだろう。
俺はサムの信号を追って、ここまで来たことを伝えた。
「・・・なるほどな。サムが、ここにいるのは間違いない。こっちだ。」
カーテンで仕切られた部屋へ向かうと、台の上に乗った死体を指さした。
ドレスデンが尋ねる。
それで、誰が彼の事件を調査するように依頼したんだね?
サムから、ビデオレターを受け取り、彼自身から死んだら調査して欲しいと頼まれたことを話す。
「Dead Man’s Switchか。面白いことを考えたものだ!」
サムの遺体を見ながら、彼が死んだ原因を考える。
『なぁ・・・サムは、どうやって死んだんだ?やはり酒か?』
「酒?いや、違う。」
ドレスデンはサムを覆っていた白い布を剝ぎ取ると、ぽかりと口を開けた腹を指さした。

「彼は、サムはエメラルドシティの切り裂き魔の犠牲者だ。二番目のな。この間三番目の犠牲者も出ている。」
『エメラルドシティの切り裂き魔・・・?』
ドレスデンは肩を竦める。
切り裂きジャックに肖ってマスコミがつけた名前。
本家本元と同じくらい、メス捌きは鮮やかなようだ。
『で、サムは何を持っていかれた?』
「肝臓を綺麗に切り取られていたよ。」
『・・・ほかの犠牲者は?』
「最初の犠牲者は心臓、三番目は脾臓を。」
そこへ、どたどたと大きな足音が聞こえてきた。
ドレスデンの顔が曇る。
「ドレスデン!!出てこい!!」
サムの持ち物を確認しておけと言うと、渋々と言った体でドレスデンは声のほうへと向かった。
カーテンの隙間から覗くと、ガラの悪いオークが苛立たし気に腕組みをして立っていた。
なんだ、あいつは。ローンスター(Shadowrunの世界の民間警察)か?
邪魔が入る前に、サムの持ち物を確認しなくては。

クレドスティックにボタンがなくなっている紫のシャツ、一部分が切り取られた手書きのメモ。
メモというよりは・・・手紙のように見える。
最後の署名は、「ジェシカ」と読めた。
メモとクレドスティックをポケットにしまい込む。
カーテンを開けると、ドレスデンと刑事が大声で言い合うのが見えた。
「怒鳴らないでくれ、マクラスキー」
「ここに、切り裂き魔のガイシャがいるだろ?ワッツだったか。そういや、奴の母親が少し前に自殺したな。」

サムの母親が自殺した?
あいつ、そんなこと一言もいっていなかったぞ・・・。
足音を立てないようにして、2人の会話に耳を傾ける。
マクラスキーは、この事件を解決すれば昇進できると意気込む。
切り裂き魔が残した証拠がなにかないか。
「見つけたものは全部提出したじゃないか。被害者を毒と魔法で動けないようにしてから、生きたまま内臓を取り出す。」
ドレスデンは、何度同じことを言わせるんだ、とでもいうような表示で、見つけた証拠について話し始めた。
犯人は右利きで、メスの扱いに慣れていると思われる。
人間とメタヒューマンの解剖学も十分理解している。それでなければ、あんなに綺麗に内臓を摘出できるとは思えない。
「外科医を探せということか?」
マクラスキーの瞳が怪しく光る。
ドレスデンが首を振って、それを否定した。
「役立たずのドワーフめが」
舌打ちして立ち去ろうとしたとき、マクラスキーは初めて、自身とドレスデン以外に人がいることに気づいた。

「なんだ、お前は。」
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