Ride On Time
No.9が黙って歩きながら、小型ターミナルを確認している。
その後ろを、苦虫を噛み潰したような表情をしたプレストン・ガービーがついていく。
ケンブリッジ地区の方へ進んで行こうとするNo.9をプレストンは呼び止めた。
「カボット邸はそっちなのか?ビーコンヒル地区のとこかにあると噂を聞いたことが・・・。」
「そのまえにバンカーヒルとやらでエドワードに会う必要があるらしい。」
「らしい?」
プレストンの疑問を面倒くさそうに手で払い除け、No.9は答えない。
ああくそ。なんで俺はこんな奴に手助けされる羽目になったんだ。
唇を噛み締め、武器を手入れを念入りにするようにスタージェスや新兵たちに言わなくてはと心の中で呟く。
そんなことを考えているプレストンを余所に、No.9はどんどんと先へと進む。
レイダーも、スーパーミュータントも、目に入る邪魔なものは全て排除する勢いだ。
ほとんど一人で片付けて行くので気づいた時には全て終わっていることが多い。
俺の手なんぞいらないくらいの腕だろう。
呆れたようにNo.9を眺める。
「・・・なんだ。」
「いや、アンタの腕なら俺の手伝いなぞいらんだろうと思っていたところだよ。」
「まぁ、そうかもな。」
しれっと、そう答えるNo.9に思わずムっとしてしまう。
プレストンが気分を害したことに気付いているのか、いないのか、No.9はマイアラークの顔面に銃弾を撃ち込んだ。
バンカーヒルへと辿り着いた時には、すでに日が暮れていた。
入り口を守るケスラーが二人を止める。
「何の用だい?そっちのアンタは・・・ミニッツメンだね。」
「私を知っているのか?」
「インスティチュートを倒したあの男から聞いたことがあるよ。」
「そうか、将軍が・・・。」
2人の話を後目に、No.9はケスラーの横を通り抜けようとする。
ケスラーがNo.9を足止めしようと銃を向けると、すかさずNo.9も銃を抜く。
「ま、まってくれ。こいつは、その、俺の連れなんだ。このまま中へ入れてくれないか?」
「あんたの連れ・・・?随分と物騒なこった。」
ケスラーとNo.9は睨みあったままだ。
「・・・あんたに指図される謂れはない。」
「私は、ここを守る責任があるんでね。傭兵風情が物騒なもの振り回してるんじゃないよ。」
「頼むから、2人ともやめてくれ!」
仕方がないといった顔をしてケスラーが銃を下ろす。
プレストンが声をかけると、ようやくNo.9も銃を下ろした。
「エドワードとかいう奴と会うことになっている。」
「エドワード?エドワード・ティーガンかい?」
「そんなような名前だったかもしれん。」
「中にいるから、話をするがいい。」
そう言うとケスラーが場所を避けて、2人を中へと招き入れた。
キャラバンの休憩所として利用されることが多いためか、バラモンを連れたキャラバン・ワーカーたちがあちこちで一休みしている。
住民と思しき人物に、エドワード・ティーガンについて聞いて回る。
雑貨店の店主が、あれだよと指さす先に、眼光鋭いグールが1人座って酒を飲んでいた。
「エドワード・ティーガンか?クリスの代わりだ。」
声をかけられたエドワード・ティーガンは、ゆっくりと2人に視線を走らせる。
「クリスはどうした。」
「ここに辿り着く前に、ちょっとな。」
エドワードの目がすぅと細くなった。
No.9を吟味しているのか、上から下まで眺める。
「まぁ、いいだろう。アンタもそこそこ腕がありそうだ。」
「・・・。」
「ここで詳しい話はできないが、ちょっとした物を探す仕事だ。やるか?」
「物を探す仕事だと?」No.9の眉が曇る。
「詳しくは、ここから南にあるカボット邸へ来てから話す。ま、無事にこれたら、だがな。」
ごちそうさまと言うと、エドワードはふらりと立ち去って行った。
「物を探す仕事だと言っていたが、君たち傭兵はそんなことまでやるのか?」
No.9がプレストンを睨みつける。
「これはクリスが受けた仕事だ。だが、あいつがただの物探しを受けるとは思えん。裏があるだろうな。」
「裏?危険なものを探す羽目になるということか?」
肩を竦めてプレストンの疑問を受け流す。
夜も更けているため、カボット邸への移動は朝を迎えてからにしようと訴えるプレストン。
その金は誰が出すんだと言うNo.9に向かって、2人分の宿賃を突きつける。
「あんたの分も出してやる!」
「そうか。俺は一緒のベッドでも構わんぞ。」
「ふざけるな!!!」
まんじりともせず朝を迎えたために、プレストンは体が重く感じた。
物探しを終えたら、用が終わったら、解放される。
そう自分に言い続けるしかなかった。

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