Wasteland3 Don’t you be my neighbor(2)

じゃあ、頼んだよというとウォン夫人は飼い猫たちの世話に戻っていった。

まずはアーヴとやらの部屋を探すしかなさそうだ。
「左側って言ってたよな。ここか?」
止める間もなくZephyrが部屋の扉を押し開ける。

中には、コンピュータとフードを目深に被って黙々と作業を行っている人物。
ちらりとレンジャー達に視線を走らせたが、すぐにコンピュータの画面へと戻っていった。

「あれ、違ったか。」
『・・・Zephyr・・・。』
Wraithが急に押し入ってしまった事を詫びると、フードの人物は紙の山を掻き分け探し出した金属のケースを差し出してきた。

ケースを受け取り眺めてみるが・・・何の変哲もない金属のケース。
Wraithが矯めつ眇めつしているのを、フードの人物はじっと見つめている。

『これは・・・なにかな。』
「・・・ライブストリーミング データが入力された冗長変数検出グリッド。」
『え?』
「警告: オブジェクトへのローカル参照を削除しないでください。メモリ割り当てが null の場合、ハンドルされない例外が発生します。」
一気にそこまで話すと、端末に戻り、こちらの存在を忘れているかのように作業を続けている。
邪魔して悪かったと謝ると、一行は部屋の扉を静かに閉めた。



3号室はこっちだとクォンが先導する。
ドアの前に立つと中からなにやら話声が聞こえてきた。

Delvinが聞き耳を立てる。
「・・・中に・・・2人・・・3人くらい人がいそうだな。」
「誰もいないって、ばーさん言ってたよな。」
Zephyrが不満そうに鼻を鳴らす。

アーヴに友達はいないと言っていたが、家主には知られたくない類いの友達なのか?
静かに開錠し、中の様子を窺う。
暗がりの中で動く影が見える。

白衣を着た人物が3人。
互いに話をするでもなく、それぞれが何かぶつぶつと呟きながら部屋の中を行ったり来たりしている。
「・・・暗くてよく見えんな。」
「あ、Delvin、足元・・・!」
Thanderの忠告が間に合わず、Delvinがワイヤートラップに足を引っかけてしまう。
爆発音を、耳にした3人が一斉に警告の声を上げる。

タレットもこちらに焦点を合わせるために動き出した。
『・・・クソっ』

奥から銃弾が足元に撃ち込まれる。
「Wraith、ぼさっとするな!」
Zephyrの声に、渋々といった体でWraithも銃を構えた。

タレットを壊し、白衣の3人を倒す。
「・・・おい。」
『これは、同じ顔・・・か?』
クォンが跪いて検分する。

「どうやら、3人とも・・・アーヴのようだ。」

部屋の中を見渡す。
コンピュータ端末がいくつかあり、机の上には紙や実験道具が散乱している。
『どこかに、手がかりがあるはずだ。探そう。』


※離れた場所にあるパネルにそれぞれ乗ると、端末の操作ができるようになる。

クォンが慎重に端末を起動する。
退屈な科学用語、図表、グラフ、難解な電気図や解剖図。
クォンの反応を見る限り、役立つような情報は端末内になさそうだ。
「なんかあるか?」
「これといって、なにもなさそうだな・・・。」
「ちぇっ」
「これは・・・著作のリストか?”現代のクローン技術 ― 夢か現実か” ”クローン技術の理論と実践”・・・」
『待て、その本の、本の著作者は誰だ。』

Wraithの問いかけに、クォンが応える。
「アーウィン・ジョン・フィンスター教授。」
Zephyr以外のレンジャーは、表情を凍り付かせた。
「?なんだよ。」
「そうか、アンタはまだ聞いたことがないのか。」
ThanderがZephyrに説明する。

アリゾナのダーウィンと言う町で行われたダーウィン計画。
アーウィン・ジョン・フィンスターは生物学、化学、コンピュータサイエンスなどの飛躍的な進歩に貢献した真の天才。
人工知能コーチスAIが核戦争後に、世界に適用した生命を生み出すと信じて、その情熱を注いだ。
ダーウィンの住民たちを犠牲にしながら。

Zephyrの顔がみるみる歪む。
「なんだよそれ。そのクソったれはどうなったんだ?」
「自分が作り出したマインド・メイズって場所で殺されたよ。」

倒れている白衣を着た3人の人物。
皆同じ顔をしている。

「・・・クローンということか?」
『フィンスターの本を読んだだけでクローン技術を応用できるとは思えん・・・。しかし・・・。』
「アーヴってやつ見つけるしかねぇな。」



保安官事務所や病院、ガレージにはそれらしき人物は見当たらなかった。
そもそもまだコロラドスプリングスにいるのだろうか。
「人を探すなら、人出が多い場所が良いだろう。マーケットで商人たちに聞いてみるといいんじゃないか?」
クォンの提案にWraithが頷く。

警備員や商人、住民に白衣の人物を見なかったと尋ねて回る。
ほとんどは首を傾げるだけだったが、ある住民がそういえばと古い書籍を売る店で、大声で話をしている白衣を着た男性を見かけたと情報を教えてくれた。

早速、その商人の店へと向かう。

「いや、いや。クローンだよ。自分の遺伝子を使って新しい人間を作るんだよ。」
白衣の人物はクローン技術について、商人に説明している。
商人はというと、興味がなさそうにしている。

『ちょっと、いいかな。』

先程始末した3人と、同じ顔をした男性が少し怯えたような顔で皆に視線を走らせる。
「え、ええと。君たちは誰かな?」
『我々はデザート・レンジャー。コロラドスプリングス周辺で支援活動をしています。あなたは・・・アーヴ?』
アーヴと呼ばれた人物は頷いた。

「アンタのアパートで、アンタにそっくりの奴に襲われたんだけど?」
Zephyrの話にアーヴがぎょっとした。
「まさか、こ、殺したのか??」
『あー・・・申し訳ないが、対応していなければ我々が殺されていたと思う。』
「てかさ、あれなんなの?」

友達を作ろうとしたんだ、と話すアーヴ。
普通じゃないやり方ではあったけれど、最初のうちはうまくいっていた。
時間が経つにつれてクローンたちがどんどん狂って言ったという。
「今日、部屋から出ていなければ、彼らは私を殺しただろうね。」

クォンが呆れたように肩を竦める。
「アパートでアーウィン・ジョン・フィンスター教授の著作物が沢山見つかったんだが・・・どういうことだ?」

アーヴの目があちこちに泳ぎ出した。
『まさかとは思うが、フィンスターが生きているってことではないよな?』
Wraithがアーヴを問い詰める。
「わ、私は・・・」

青ざめたアーヴは観念したように話し出す。
フィンスター博士のクローンの一人。
残念ながら、少なくとも第四世代なので、オリジナルほど賢くはない。
フィンスター博士のメモを使って またクローンマシンを作動させるくらいには賢い・・・と溜息交じりに話す。

「君たちは・・・信じてくれるか?保安官たちには秘密にして欲しいんだ」

どうする?といいたげな表情でZephyrがWraithを見上げる。
『・・・わかった。信じよう。君さえよければレンジャー部隊で研究を続けてもいい。』
「ほ、本当かい!?ありがとう!アパートから研究道具を運んでいくよ!」

アパートの管理人には我々から話をしておくと言い残し、サン・ラックス・アパートメントへと戻る。

歩きながら、クォンがよかったのかと尋ねてきた。
「自分の事をクローンだという研究者を、レンジャー部隊に招き入れて大丈夫か?」
『フィンスターのことだから、クローンと言うのは真実味がある。』
それに。
また出来の悪いクローンを作って、住民に危害を加えるようなことを招くのを防ぎたい。
確かにそうだとクォンも頷く。



アパートに戻ると、ウォン夫人が待ち受けていた。

「それで?どうだったんだい?」
『ああ、アーヴを見つけた。彼は我々レンジャー本部で受け入れるから、部屋を片付けていい。』

ウォン夫人は疑うような視線を皆に向ける。
「あんたたちんとこ?部屋が開くのは有難いが、アーヴはなにをやらかしたんだ。」
「あー・・・」
『ちょっとした研究をな。その研究を我々の本部でも続けてもらうつもりだ。』

研究という言葉にウォン夫人が頷く。
アーヴは確かに私らにはわからない研究をしていたんだろうね。
根っからの悪人ということではないと思う。

「ありがとう、レンジャーたち。綺麗に物事を片付けてくれたお礼にちょっとしたものをやろう」

ウォン夫人から謝礼を受け取ると、アパートを後にした。



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