Kingの前に飛び込んできた革ジャン姿の部下は、しばらく肩で息をしていた。
「なんだ?なにがあった?」
「え、駅の跡地近くで銃撃戦が・・・!」
「なんだと?NCRが攻撃を仕掛けてきたのか?」
「それが・・・」
どうやらPacerとその子分と思しき野郎たちが誰かと銃撃戦を繰り広げているようだ。
先ほどVesperと交わした会話や駅の跡地近くで行っていることから、相手は恐らくNCRだろう。
クソッタレとVesperが小さく呟く。
Kingは深々とため息をつくと、Vesperとヴェロニカに向き直る。

「あのバカは何をしているんだ・・・!」
『で?どうする?』
「NCRには、Kingsは協力するつもりがあることを伝えてほしい。」
『ほう?』
「争うつもりはないということをわかってもらえ」

「あいつ、なにやってんだろうね?」
『ん?』
「Pacerだかってやつ。NCRからの使者をボコボコにしたり、喧嘩売りに行ったりしてさ。」
Vesperが肩を竦める。
『なんだっていいが、NCRと話をつけてKingに恩を売らねぇとな。』
ヴェロニカは納得がいかないのか、一人ぶつぶつと呟いていた。
二人はAtmic Wrangler横の廃墟を抜けて、駅の跡地を目指す。
銃撃戦の音と怒号が近づいてきた。
銃に手をかけ辺りを見回すと、Pacerがバス停に身を隠しているのが見えた。
「なにやってんの、あいつ。」
ヴェロニカが呆れたように言う。

近づく足音に気付いたPacerが顔を上げる。
Vesperとヴェロニカだと気づくと、何しにきたと噛みついてきた。
暫くの間、VesperとPacerはにらみ合う。
『ヴェロニカ、こいつを押さえとけ。』
「なっ・・・!」
「オッケー!邪魔なんだよね、あんた。」
ヴェロニカがPacerの肩を押さえつける。
近づいてくる人物がVesper一人であることを確認したキーラン少佐が、周りの部下たちに攻撃をやめるように指示する。
「何の用かしら。」
『Kingの遣いだ。』
キーラン少佐が鼻で嗤う。
「我々からの使者を痛めつけておいて?」
『その話だが、Kingは全く関与していないらしいぜ。』
「どうやらそのようね。」
ちらりとPacerがいるバス停付近に視線を走らせる。
『Kingからの伝言だ。アンタたちに協力する気がある。話し合おう、と。』

キーラン少佐がさっと手を上げると、銃を構えていた部下たちは三々五々と立ち去っていく。
「Kingに伝えて。協力しあうなら解決策が見いだせるわ。」
『・・・OK。』
「あと。」
『なんだ。』
「汚いネズミは早めに始末することね。」
そう言い残すと、キーラン少佐は背を向けた。
NCR達が立ち去ったのを見届けると、ヴェロニカは押さえつけていたPacerから手を離した。
「くそ・・・この場を収めた救世主面かよ。」
『あ?』
「せいぜいその立場を楽しんどけ。」
Pacerが立ち去ろうとした瞬間、ヴェロニカがその腕を掴み背負い投げた。
地面に転がる男の額にVesperが銃口を向ける。
『殺されてぇなら、望みを叶えてやるよ。』
「腕の1,2本折ってやってもいいんだよ?」
クソッタレ!と二人を罵りながら、Pacerは立ち去って行った。
Kingの物まね学校まで戻ってきた二人。
拳をバキバキと鳴らしながら、あいつマジで腹立つねとヴェロニカ。
『あいつの始末はKingに任せる。』

一足早く部下から銃撃戦がおわったことを聞いていたのか、Kingはにやりと笑いかけてきた。
「よくやった。いろいろ助けてもらったな。」
『・・・ああ。』
「一つだけ望みを言ってみろ。可能であれば力になってやる。」
『ストリップ地区に入りたい。』
「・・・なるほど。で?」
『パスポートかキャップが必要だと言われたんだ。なんとかしてくれ。』
Kingは面白そうにVesperとヴェロニカの顔を眺める。
「わかった、いいだろう。」
Mick and Ralphに行って、Ralphと話をしてこい。
なんとかしてくれるはずだ。
Kingはそう言うと足元で寝そべる犬の頭を撫でた。
※NCRとの銃撃戦でPacerが生き残ると・・・何食わぬ顔をしてKingのもとに戻ってました・・・!
つらっとKingの横に座ってて、思わず笑ってしまいましたよ。
それでいいの、King・・・?

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