The Right Moment 2
・The Right Moment
・The Right Moment 2
幾度目かの春が過ぎ、ソフィとルシアはそれぞれ農園以外の仕事で忙しくしていた。
ソフィは元々ウィンドヘルムで育ったという事もあり、市場に出入りして野菜を売ったりしている。
仕事帰りに肉や魚を貰って、その日の夕食にしたりしていた。
馬屋で働いているルシアは、あちこちからやってくるトレーダーと仲良くなり、色々な話を聞いたりしてSkyrim以外の場所に思いを馳せることも多くなった。
「シロディールにはアルケイン魔法大学っていう、大きな魔法の学校があるんだって。」
「ウィンターホールド大学みたいな感じ?」
「もっともっと大きいって言ってた。」
「誰が?」
「レオが見たことあるって。」
ここ最近、ルシアの話題によく上る名前だ。
ソフィはまだレオに会ったことがない。
どんな人なの?と聞いても、ルシアははぐらかすだけだった。
ジェナッサに相談してみると、大丈夫だとは思うけど早めに人となりを確認しておきたいわねと言う。
Midirは、といえば。
最近また忙しいらしく、3週間ほど顔を見せていない。
同胞団の仕事でマルカルスの更に先にある遺跡まで足を延ばしているらしい。
「相談したかったんだけどな・・・。」
「今度会ったら、ここに来るように言っておくわね。」
ある日、少しだけ早めに市場の仕事が終わり、分けてもらった肉でシチューを作ろうかなと考えながらソフィーが歩いていると、馬屋の前でルシアが見知らぬ青年と話をしているのが見えた。
ルシアは、とても可愛らしく微笑んでいる。
青年を見つめる視線。 青年がルシアを見つめる視線。
2人に声をかけず、そっとその場を離れた。
食事の用意をしているところに、ルシアが戻ってきた。
上機嫌なのか鼻歌まで歌っている。
出来上がった食事を手早くテーブルに並べていると、ルシアがソフィの側に立って何か言いたげにしていた。
「どうしたの?ご飯できたよ。」
「あのね、ソフィ。」
珍しくルシアが言葉を選んでいる。なんだかもじもじしているようにも見える。
もしかしてレオを紹介してくれるのな。ソフィはそんなことを考えた。
「レオが。」
「うん。」
再び沈黙。
ルシアの言葉を、ソフィはじっと待つ。
「・・・・・。」
ルシアは口の中で、もぞもぞと何かを呟いた。
見ると、耳まで真っ赤にしている。
「レオが、どうしたの?」
優しく尋ねるソフィの声に、ルシアはようやく意を決したように顔を上げた。
「あの、これを、くれたの。」
ルシアの手にはマーラのアミュレット。
「一緒に、仕事をして欲しいって。シロディールに来ないかって。」
ルシアの嬉しそうな顔を見て一緒に喜びたい感情と、いなくなってしまう寂しさと、レオという人物を信頼していいのかという不安が一気にソフィの胸に押し寄せる。
そんなソフィを余所にルシアはレオがMidirに会いたい、寒くなる前にシロディールに来て欲しいと言っていると話す。
翌朝、早速ジェナッサに相談すると、渋い顔をしながらもルシアがそういうならとMidirの様子を確認しにホワイトランへ戻って行ってくれた。
朝、ルシアと共に仕事へ向かう途中の道で、レオが二人を待っていた。
青年は緊張した面持ちでソフィに話しかける。
「レオナルド・ベレフォートと、いいます。あの、ルシアと、一緒になりたいと考えています。この間マーラのアミュレットを渡しました。Skyrimではそうすると聞いたから。」
自分は父親と共にシロディールから行商でやってきていること。
近いうちに父のルートを受け継ぎ独立すること。
その時、一緒にルシアと旅したいと考えていることを、一生懸命に話す。
「ルシアを・・・守ってくれる?」
「俺、こう見えても剣や弓の扱いは得意なんです。傭兵たちと一緒に荷物を守らなきゃならないから。」
「ルシアのどんなところが好き?」
「ちょっと、ソフィ!」
レオがルシアに優しく微笑みかける。
「ルシアが話てくれる、貴方のことやMidirさんのこと、まだ行ったことないけどホワイトランの皆の話を聞くの、俺すごい好きなんです。一生懸命話をしてくれるルシアのことも。」
Midirには、きちんと挨拶したいとレオ。
とはいえMidirがいつウィンドヘルムの家に来るのか、今のところ予定が見えない。
レオの一隊は三日後にソリチュードへ発つらしい。
ソリチュードで一週間ほど過ごした後、シロディールへ向けて移動を開始するというのだ。
「それまでに来るといいけど・・・。」
レオはソリチュードへ発つまでの間、毎日家にやってきた。
自分のことをわかってもらおうと、ルシアとのことを信頼してもらおうと、一生懸命だった。
ソフィは青年がルシアのことを、ルシアが青年のことを互いに思っていることが嬉しいと感じていた。
父と母を幼い頃に亡くし、叔父たちに農場を奪われ、ホワイトランでお腹を空かしていた幼い少女が、ようやく幸せになれるのだと思うと、泣きたいような気持にもなった。
三日待ってもMidirはウィンドヘルムの家へやって来なかった。
レオは、ソリチュードの宿屋に部屋を取っているから、もし来る予定があるならと言ってくれた。
ルシアは姿を現さないMidirに腹を立てている。
「なによ、必要な時に来てくれないじゃない!」
「ルシア・・・。」
「Midirになんか会わずにシロディールに行くから、もういい!」
数日待っても姿を見せない。
今回はレオと顔を合わせることができないかもしれない。
最初のうちは怒りをぶちまけていたルシアも、少し元気がなくなってくる。
「もう・・・Midirなんか、しらない。」
「んだよ、折角来たのに。」
久しぶりに姿を現したMidirは、いつものように血と泥で汚れていた。
後ろからエリクも顔を覗かせた。
どうやら同胞団の仕事帰りに真っ直ぐやって来たようだ。
一瞬喜んだ顔をしたルシアだったが、すぐに汚れてきたない!と説教を始める。
「仕方がないだろ。山賊とか巨人の居住地とか片付けてきたんだから。」
「もう!」
「ルシア、大切な話、あるでしょう?」
ソフィが水を向けると、ルシアはあっという間に耳まで真っ赤になった。
もじもじするルシアを物珍しそうにMidirが眺める。
「なんだ?どした?」
「あ、あのね。あの。」
「・・・おう。」
「わ、わたし、レオにこれをもらって。それで、寒くなる前にシロディールに。」
ルシアがマーラのアミュレットを見せても、Midirはぽかんとしていた。
慌ててエリクが助け船を出す。
「Midir!マーラのアミュレットだよ!?ルシアが誰かと結婚するってことだよ!」
「けっこん・・・?」
真っ赤な顔をしてルシアが頷く。
Midirが真顔でルシアの頭をがしがしと撫でた。ただひたすら、がしがしと。
「Midir、それでね。結婚相手のレオが会いたいって言ってたの。待ってたんだけど来なくて、ソリチュードで待っててくれてる。」
ソフィが声をかけても、Midirはただただルシアの頭を撫でていた。
ルシアも何も言わずに撫でられたまま。
髪がぐちゃぐちゃになっても、ルシアはなにも言わずMidirに撫でられていた。
「ソリチュードか。」
「あ、でももうちょっとでシロディールに戻っちゃうかな・・・。」
「わかった。」
ルシアとソフィを見つめると、独り頷く。
「行くか。」
エリクに馬を出すように指示すると、2人の意見も聞かずにソフィを自分の馬に、ルシアをエリクの馬に乗せて駆けだした。
近道しようと森の中を走ろうとするMidirをエリクが押し留める。
ルシアとソフィがいるんだからと、できる限り安全な道を進む。
夜通し馬を走らせ、ソリチュードへと辿り着いた。
こんなに長い時間馬に乗ったことがなかったルシアとソフィは、疲れ切って暫く動けないでいる。
「大丈夫?」エリクが心配そうに声をかける。
「ちょっとだけ休めば、大丈夫。」
馬を馬屋に預けてきたMidirが二人を呼ぶ。
「レオだかってのは、どこにいるんだ?」
Midirに声をかけられたソフィの表情がぱっと明るくなったことにエリクが気づいた。
「宿屋にいるって言ってた。多分・・・今日までじゃないかな。」
「もう、Midirがすぐに来ないからよ!」ルシアが怒ってMidirを責める。
「仕方ねぇだろ。同胞団の仕事片付けてたんだから。」
エリクがMidirとルシアの喧嘩を諫めて、宿屋へと向かおうと言う。
宿屋へ辿り着いた4人は、レオの一行がすでにソリチュードを発ったことを聞かされる。
「人が来るかもしれないって、ぎりぎりまで待ってたみたいだったよ。」
「そんな・・・!」
「船に乗ってシロディールに戻るって言ってたから、港に行ってみたらどうだい?」
「おう、ちょっと行ってみるか。」
慌てて港へと向かうと、最後の荷物を運び終え橋板が外されたところだった。
「レオ!!!」
ルシアの叫び声を聞きつけ、レオが船べりに走り寄ってきた。
「ルシア!雪が降る前に迎えに来るから!!」
「Midirも一緒に来たのよ!」
ルシアがMidirの腕を掴み、レオに向けて手を振った。
レオはしっかりとMidirを見据え、頭を深々と下げる。
Midirもレオを見つめて、目を逸らさない。
ルシアは離れて行く船にずっと手を振り続けていた。
話ができなくて残念だったねとエリクが呟く。
「でも、あいつ良い奴だと思う。」
小さくなった船を見つめながらMidirは自信ありげに、そう言う。
あまりの自信にエリクは呆れたような顔をしたが、ソフィとルシアは笑顔になった。
「じゃ、折角ソリチュードまで来たから休んでから、戻るか。」
「やったぁ!珍しくいいこと言うじゃないMidir!」
「僕もソリチュードは初めてだから、楽しみだな!」
港からソリチュードの街へ戻る道すがら、Midirは心が何故か重たく感じた。
なんだ、この感じ。
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