The Right Moment

・The Right Moment
The Right Moment 2

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Midirがソフィとルシアの2人にウィンドヘルム近くの農場を用意してから、ジェナッサは頻繁に農場を訪れていた。
いくら隣の家の夫婦にお願いしてあっても、心配だったのだ。

2人はひょんなことから手に入れた「自分たちの家」を心から愛していた。
様子を見に来てくれるジェナッサや隣の家の夫婦に感謝しても仕切れないとも思っていた。
勿論、家を用意してくれたのはMidirであることは百も承知している。

肝心のMidirはドーンガードの仕事も手掛ける様になり、忙しい日々が続き中々農場に来ることができずにいる。
来ることができても、ドアから顔を覗かせて2人の様子を窺い、「またな」と声をかける程度だった。
しかも来るときは必ずといっていいほど、血や泥で汚れていた。


「Midirってさ。」
先日も通りがかりに顔を覗かせたのか、ひどく汚れた格好をしていたことをルシアが指摘する。
「汚いよね。」

顰め面のルシアに、思わずソフィが噴き出す。
「どうしたの、急に」
「血がついたりしてるしさ、近寄れないじゃない。」

ああ、そうか。
ルシアは折角やってきたMidirの側に行って話したりしたいんだ。
「・・・そうね。じゃぁ、今度来た時は、綺麗にして貰おうか?お水用意しておけばいいかな?」
「臭い時もあるから、新しいお洋服用意しておいたらいいんじゃないかな。」

2人はお金を貯めて、Midirが泊まれるようにすることに決めた。


2人で慎ましく暮らすには農場の仕事だけで充分であったが、Midirの洋服や怪我をしたときのために薬を用意しようと考えて、ソフィはウィンドヘルムの市場で、ルシアは馬屋での仕事をすることにした。
ジェナッサに相談すると、Midirのため、というのは引っかかるが、自活するために様々な仕事をすることに異存はなかった。

「最近お兄さんはホワイトランに来てる?」
「そういえば見てないわね。同胞団の方にも来てないみたい。ドーンガードが忙しいんだろうね。」
「そっかぁ・・・。」
しょんぼりとしたソフィを見て、ジェナッサは頭を撫でてやる。
今度会ったら必ずここに来るように言っておくからね、と約束して、ジェナッサはホワイトランへと戻って行った。


「よお。」
2人で夕食の支度を始めようか、と話をしていた時だった。
数か月ぶりにMidirがやってきたのだ。

駆け寄ろうとしたルシアがMidirの後ろに見知らぬ人物が立っていることに気付く。
ソフィがルシアを後ろ手で庇うと、恐る恐るMidirに尋ねた。

「お兄さん、・・・その人、誰?」
「ん?」
Midirは2人にセラーナを紹介する。
紹介された女性は、どうしていいのかわからない、といった表情でソフィを見つめた。

とても綺麗な女性だ。それはソフィにもわかった。
なんで、この人を連れてきたの?
ルシアは黙りこくったままMidirを睨みつけている。

Midirがソフィを近くの椅子に座らせる。
「こいつは、ドーンガードの仕事で知り合った仲間だ。」
「なかま・・・?」
「おう。ジェナッサと同じだ。仲間。挨拶できるか?」

セラーナの方を見ると、おずおずと手を差し伸べる。
緊張した面持ちでセラーナもその小さな手を握りしめた。


セラーナを送ったら、また戻ってくるからなと言い、Midirは農場を出て行った。


「あいつ!なんなのよ!!久しぶりに来たと思ったら、すぐに行っちゃうなんて!」
Midir達が姿を消すと、すぐにルシアが怒りだした。
夕食時に来たのだから、一緒に食事をして話ができると思っていたのに、と呟く。
汚くて臭いMidirの為に、着替えも用意してあるのに!!

「戻ってきてくれるって言ってたよ。ご飯食べて待とうか。」

膨れっ面になってそっぽを向くルシアに優しく声をかける。
ふん!と顔を背けて、隅っこで横になりだした。

仕方ないわね・・・と溜息とつくと、ソフィはルシアの好物アップルキャベツシチューを作り、パンや果物を食卓に乗せる。
改めてルシアを呼んでみるが、まだ怒っているのか、黙ったままだ。

「いつまで拗ねてるの?冷めちゃうよ。」
「・・・。」
近寄ってみると、具合が悪そうだ。額に手を当てると、熱い。
「ルシア、ベッドに行こう。起きれる?」
その声に反応して、なんとか立ち上がり、よろよろと自分のベッドに倒れ込んだ。

隣の家に薬を貰いに行こうとするソフィの服を、ルシアが掴んで離さない。
「薬、貰ってくるから。ルシア、ちょっとだけ待ってて。ね?」
「・・・やだ・・・。」
「ルシア。」

「・・・おかぁ・・・さん。」

ルシアが消え入りそうな声で、母親を呼んだ。
洋服を握りしめる手を解こうとしていたソフィが思わず動きを止める。



大きな手のひらがソフィの頭を撫でた。
知らぬ間にルシアのベッドの脇で眠り込んでいたようだ。
戻ってきたMidirがソフィとルシアの様子を窺っている。

「こんなとこで、どした?」

ルシアが熱を出したことを訴えようとしたが、体が上手く動かず声がでない。ソフィも・・・熱を出してしまったのだ。
Midirにしがみつくと、なんとか2人とも具合が悪いことを伝えようとする。
しがみつくソフィの体が熱いことに気付いたMidirは、ルシアの額に手を当てる。

「ふたりとも、熱でたのか。」
ソフィが力なく頷いた。
薬を貰いに行こうと立ち上がろうとしたが、ソフィがしがみつく手に力を込めたことを感じたMidirは、ソフィを抱いたまま鞄の中に何か薬がないかと漁る。
鞄の底から疾病退散の薬がでてきた。
熱に効くのかわからないが、とにかく飲ませてみることにする。

ルシアを起こし薬を飲ませると、ぼんやりとした目でMidirを見つめた。
「おかぁさん・・・。」そう呟くと、ルシアもMidirにしがみつく。

2人の子供を抱えて、どうしたものかと考えながら、Midirも一緒に眠りに落ちて行った。


「ちょっと、どうしたのよ。」
Midirがルシアとソフィを抱えて、寝込んでいる姿を見て、ジェナッサが驚いた声を出す。
その声で2人は元気にベッドから跳び起きた。元気になったようだ。
Midirはというと、まだ夢の中にいるらしい。

「おい、坊主。仕事だ。」
同胞団のファルカスが、ジェナッサと共にやってきていた。
ファルカスの声を聞き、ようやくMidirは身を起こした。


「じゃあな、また来るからよ。」
「おにいさん、ありがとう。」
ソフィとルシアが照れ臭そうにMidirに礼を言う。
看病してくれたことへの礼らしい。

ジェナッサに2人を託して、ファルカスと共に農場を後にした。


今日はウィンターホールド近くまで行かなければならないと、ファルカスが地図を示す。
言葉少なに頷くと、Midirは立て続けにくしゃみをし、鼻水を飛ばした。

「・・・お前、うつったんじゃないのか?」
「へ?」

ファルカスがMidirの額に手を当て、思わず顔を顰めた。

「仕事はなしだ。帰れ。」
「やだよ、くしょん、兄貴、俺、はっくしょん、仕事、できる、ぶえっくしょん!!」
「いいから、帰れ!!!!」


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