Fallout NewVegas ; One for My Baby
ブーンが合図の為にと、自分の被っていたベレー帽を渡してきた。
『どうすればいいの?』
「犯人を見つけたら、ベレー帽を被って恐竜の前に来てくれ。あとは俺が始末をつける。」
『わかった』
「このことが片付くまで、俺には話しかけるな。いいな。怪しまれないために。」
無言で頷き、恐竜を後にする。
疲れたので、モーテルで泊まることにしよう。犯人捜しは、明日の朝からやれば見つかるだろう・・・。
部屋を借りるために、再び「Dino Dee-Lite」へ向かう。
丁度ジニー・メイが自宅に戻ろうとしているとことに遭遇した。
『遅い時間に悪いんだけど、部屋を借りたいの。』
「いいよ。これが鍵ね。私は自宅に戻るけど、あなたの部屋は二階になるわ。」
ジニー・メイから鍵を受け取るときに、ついでにカーラのことも聞いてみることにした。
『恐竜の上のスナイパー2人に会ったわ。ブーンは結婚してるって聞いたけど、奥さんはどんな人なの?』
ジニー・メイの表情が少しだけ動いた。
「そうさね。彼女は・・・サボテンの花のような女性だったよ。この町を田舎と嫌って、出て行こうとブーンを説得したりしてた。」
『ふーん。』
「彼はカーラが誘拐されたと信じたがってるみたいだけど、彼女が自分で出て行ったという線も否定できないわね。」
随分と嬉しそうに・・・悪口を言う。
ジニー・メイの表情に”ざまあみろ”という感情が見え隠れしているように見えた。
部屋の鍵を受け取り、自分の部屋へと上がる。
ベッドで横になるが、色々な思いが駆け巡って眠ることができない。奴隷商人に売られようとしたブーンの妻カーラ。
何故ブーンは彼女がもう死んでいるとわかっているんだろう。
『駄目だ。気になって眠れない。ジニーのところを調べてみて、それから寝よう。』
そっと階段を降り、誰もいない「Dino Dee-Lite」へと忍び込む。
日中ジニー・メイが座り込んでいた机の周りをあれこれと探す。ロッカーや机を漁り・・・足元にある金庫も開けてみた。
『あった・・・』
それは「売買契約書」だった。そこにはカーラを1000キャップ、まだ生まれていないお腹の子供に500キャップで購入したと書かれている。しかも子供は終身奴隷として扱われるという。
胸がむかむかしてきた。
忘れていた記憶がフラッシュバックする。
優しい顔をして手を引いていた養父母が、5歳のLuciaを奴隷商人に売り渡したときの映像だ
『まずい、寝よう・・・。』
「売買契約書」を胸ポケットにしまい込み、よろめきながら自室へと戻る。
昼頃まで寝ていたようだ。気が付くと、太陽が高く昇っていた。
ブーンの当番は夜だから、暗くなるのを待ってジニー・メイを連れて行かなきゃな・・・。
久しぶりに、時間ができた。ED-Eにお願いしてラジオをかけてもらう。
あれこれ考えてしまうので、本当は今すぐにでもジニー・メイを問い詰めたいところだが、我慢我慢。それより何と言って連れ出すかを考えなきゃね。
夜、ジニー・メイの元へ行くと、昨夜はカーラの悪口ばかり言ったと気づいたのか
ブーンはカーラがいなくなって気落ちしているだろうというようなことを言ってきた。
『ジニー・メイ、ちょっと一緒に見て欲しいものがあるの。町の外に見慣れないものがあってね。』
「おや、なんだい?」
『この町の顔役とも言える貴方なら、うまく対処してくれるかと思って。』
ジニー・メイは満更でもない顔をしてLuciaの後をついてくる。
横目で恐竜を見て、ブーンに貰ったベレー帽をかぶる。
「いったい、どこまで・・・」
ジニー・メイがそう言葉を発した瞬間、たーん!と乾いた銃声が一発響いた。
『さようなら、ジニー・メイ。』
重い足取りで恐竜の階段を上げる。
ドアを開けると、ジニー・メイを複雑な表情で見下ろすブーンがいた。
『終わったよ。』
「・・・どうして、彼女だと思ったんだ。」
胸ポケットにしまい込んでいた「売買契約書」をブーンに渡す。
「これは・・・?」
『売買契約書。後生大事に取ってあったよ。』
「こんな紙切れ一枚で・・・カーラは・・・」じっと契約書を見つめるブーン。