ノバックからキャンプマッカランへと向かう途中、ラウルはLuciaにブーンの事を聞いていた。
「一体、そのブーンさんとやらは・・・どんな奴なんだい?」
『えーとね。あんまり喋らないんだけど、銃の腕は凄くてね。』
ブーンと旅するようになった経緯を簡単に話す。
自らの手で幕を引かなければならなかった男。周りを信用することができなくなり、身動きが取れずにいた男。過去に・・・囚われ続けている男。
「そいつはさ」
『うん?』
「助けを求めていたんだろうな。」
『助け?どういうこと?』
ラウルがLuciaの頭にぽんと手を置き、いつかわかる日がくるさと呟いた。
久々にキャンプマッカランへとやってきた。
Hsu大佐のところにいるかと思い、真っ先に建物の中へと向かう。
Lucky38へ向かうと言っていたが、まだその辺にいるかもしれんぞとHsu大佐が教えてくれたので、外のテントを見て回ることにしよう。
「やあ、ブーンを探しているのかね?」
『こんにちは。まだ、この辺にいるのかな?』
ブーンは少し前にキャンプマッカランを後にしたようだとスターリング兵長が教えてくれた。
見るとスターリング兵長は足を庇うようにして歩いている。
『怪我でもしたの?』
「ああ、これか。これは・・・昔リージョンに捕まってしまった時に拷問されてね。」
元はレンジャー部隊にいたというスターリング兵長。
偵察中にリージョンに捕まり拷問を受けたそうだ。
なんとか逃げ出すことはできたが、もうレンジャーとして戦うことはできない。
ゴロベッツ少尉が第一偵察隊にと声をかけてくれたという。
スターリング兵長の話を聞いていると、ラウルがまた何か言いたげな表情をしていることにLuciaは気が付いた。
あとで聞いてみよう・・・。
『ラウル?』
「ん?どうした、ボス?」
『・・・何考えてるの?』
ラウルが深く溜息をつく。
ラウルがスターリング兵長の話をどう思うか聞いてきた。
手足が使い物にならなくなって軍を辞めることもできたのに、再び軍に戻ってきた男。どう思う?
Luciaは、専念できることがあるのは凄いことだと思うよ、と答えた。他のやり方で役立とうとしていることも。
ラウルが考え込んでしまったので、スターリング兵長に別れを告げてテントを出る。
「俺が・・・ラファエラと2人だけになっちまった話、覚えているかい?」
『うん。』
ラウルの妹ラファエラ。メキシコシティに行けばカウボーイがいると言って、メキシコシティへと向かったそうだ。
『メキシコシティ、爆撃されてたんじゃないの?』
「あん時はどうにかなると信じていたんだな。俺も若かったよ。」
メキシコシティでの生活も苦しかった。ごみを漁って日々を凌ぐ。
そんな中、カウボーイの衣装を手にして着てみるとラファエラが笑ったんだ。
ラウルの口元が少しだけ綻ぶ。
『カウボーイの衣装?目立つような気がするけど・・・』
「そうさなぁ。俺に挑戦する奴らも出始めたな。だけどな」
『けど?』
「俺の敵じゃなかったな。」ニヤリと笑うラウル。
メキシコシティでの生活もなんとか目途が立ってきた矢先に。
ラウルが言葉を切った。
黙ったまま続きを待つLucia。ラファエラがあんなことになった・・・?どういうこと。
手のひらで顔を覆い、一つ溜息をつくとラウルはラファエラの身に起こった出来事を話しだした。
いつものようにゴミを漁りに出かけていたラファエラのところに、レイダーどもがやってきたんだ。
遺体を見つけた時、すぐにラファエラだとはわからなかった。
膝にある小さな傷を見つけるまでは。
Luciaがラウルの服の裾を引く。あんまりな話じゃないか。
ラウルがそっとLuciaの手に、自分の手を重ね、話を続けていく。
レイダーどもを襲撃して、全て片付けた時には疲れ切っていた。
1人きりになりたくて、メキシコシティを後にした。
ペトロ・チコの製造工場を見つけて・・・色々考えたんだ。
『なにを・・・考えたの?』
「今までの人生さ。銃で俺は一体何を手に入れたんだろうって。」
『・・・うん。』
「何も、手にはいらなかった。で、銃を捨てて工場のジャンプスーツに着替えたんだ。」
ラウルが寂しく笑った。
「またじじいの昔話に付き合ってもらっちまったな。さ、ブーンさんに会いに行こうか。」