
インスティチュートから地上に戻ってきて、あれこれと頭を悩ませていた。
ノーラがいたら・・・なんと言っただろう。だけどノーラはいない。
俺は誰かに話を聞いてもらいたかった。
ふと、ニックに会いたくなってダイヤモンドシティに向かうことにした。
「やあ、ニック」
「どうした?久しぶりだな。」
「うん・・・。一緒に出掛けないか?」
「いいね。あんたとまた出て行くっていうのは。」
ニックがじっと俺を見つめる。
「あんた・・・少し顔色が悪いようだ。何かあったのか?」
「・・・いや。なんでもないよ。」
「そうか。」
立ち上がったニックはひとつのファイルを手に取り、逡巡していた。
「終わりにしてしまいたい、ニック・バレンタインの過去がまだあるんだ。」
そう言ってファイルを渡してきた。
中を見ると・・・とても古いものでメモなんかはボロボロになっている。
「ニック、これは・・・?」
俺からファイルを受け取ると、その場を少しウロウロして・・・ようやく意を決したようだ。
俺を見つめながら重い口を開いた。
「かつて・・・ボストンにエディー・ウィンターという名の犯罪王がいた。」
「エディー・ウィンター?聞いたことがあるぞ。奴は本物のクズだ。」
ニックが小さく頷く。
「そうだ。罪のない人々を沢山傷つけた。だが奴も自分が終わりに近づいているのを感じていた。」
「じゃあ、投降でもしたのか?・・・まさかな。」
ニックは静かに首を横に振ると、皮肉な口調で話を続ける。
「奴は・・・生き延びるためにVaultの施設に投資した。あんたのいたところは冷凍睡眠だったんだろ?」
「ああ、俺たちは冷凍されて眠っていたよ。」
「奴の投資したのは放射能施設だったんだ。」
「まさか、放射能で・・・?」
自らグールになったというのか?生き延びるために?そんなことをする奴がいるのか?
「そう。グールになったんだよ。200年前では相当ファッショナブルなことだったんだろう。」
俺の疑問に皮肉で答える。
「奴はVaultに閉じこもり、核の炎も生き延びた。地上に戻ってきたときに、再び悪の時代を築き上げるつもりだろう。」
「そんなことはさせない。それを防ぐために奴を見つけて殺すつもりだ。手伝ってくれないか。」
いつも冷静なニックが少し興奮しているようだ。
殺したいと思っているのは、人間のニックか?今ここにいるニックか?
「ニック。あんたらしくないことを言うな。どうしたんだ?」
苦しそうにニックが顔を顰める。
「人間のニックの記憶だ、ということは分かっている。一人の女性の記憶があるんだ。美しくて純真な子だった。・・・ウィンターが殺したんだ。奴は対価を払うべきだ。」
そう言って俺を見つめる。
過去の記憶に囚われて苦しんでいるその姿を見ているのは辛い。
「・・・わかった、ニック。悪者を倒しに行こう。」
隠れ家のドアを開けるためには暗号が必要で、10本のホロテープ(他の組織に自分の罪を着せるために作られたもの)に暗号が隠されているという。
「ホロテープを見つけ出さなきゃならないな。」
「1本はすでに回収済みだ。フェラルグールでいっぱいになる前にケンブリッジ警察署から持ち出しておいた。」
「じゃあ、残りは9本てわけか。」
「長丁場になるぞ、いいのか?」
「勿論だ、ニック。」