レックスが嬉しそうに尻尾を振りながらLuciaとラウルを交互に見上げる。
よしよしと頭を撫でると、満足そうに鼻を鳴らした。
さて、Jacob’s Townに向かうとしよう。
北門を出て、北西の山岳地帯を目指して歩いていく。
途中マンティスが出たりしたが、ラウルとレックスが見つけ次第倒してくれるので、Luciaが気づいた時には戦闘が終わっていることが多かった。
そういえば。
『ラウル。何か話したいことあったんじゃないの?』
「・・・ん、ああ。まぁ、そうだな。」
言い出しにくいのか、すっきりとしない返答だ。話したくなったら言ってくれるだろうとLuciaも深追いはしないでおいた。
雪を頂く山々の中にJacob’s Townが見えてきた。
『あそこね。』
「なぁ、ボス・・・。俺の見間違いでなければ・・・スーパーミュータント達がいる様に見えるんだが。」
のしのしと歩くスーパーミュータ達は、こちらに気が付いても発砲したり威嚇したりしてこない。
そうこうしているうちに、1人のスーパーミュータントがこちらに向かって歩いてきた。
「ようこそ、ヒューマン。ナイトキンを見つめたりしなければ、このJacob’s Townを好きなように見て回ってもらって構わない。」
穏やかな声でLuciaに話しかけてくるスーパーミュータント。
彼は他のスーパーミュータント達とは少し違うようだ。
『私はLucia。あなたは・・・?ここは、一体どんな場所なの?』
「私はマーカス。古い友の名をとって、この町の名前にした。ミュータントが静かに暮らせる場所として。」
「・・・一体アンタたちどこからやってきたんだ。」
マーカスはラウルの質問にぽつりぽつりと答えてくれた。
Broken Hillsという町を運営していたこと。仲間たちと共にArroyoという村を救うために旅をしたこと・・・。
「いつの日か・・・ウエイストランドの人々と交易出来たらと考えている。もう・・争いは嫌なんだ。」
「・・・あんた、他のミュータントとは何かが違うな。」
で、お前たちはここに何をしに来たんだ?と聞かれて、ドクター・ヘンリーに会いに来たことを思い出した。
Docならロッジの中だ、と大きな建物をマーカスは指さした。
ロッジの近くにくると、帽子を被たナイトキンがぶつぶつと独り言を言っているのに遭遇した。
Luciaを見つけると、あらあらと言って大きな手のひらで頭を優しく撫でる。
「可愛い可愛いお嬢ちゃんは、どこから来たの?」
『え?わ、私?えーとLucky38からきたの。』
2人のやりとりをラウルは黙って見つめている。
まるで孫を可愛がるばーさんだな、とラウルは思った。
じゃあねと手を振って別れると、ナイトキンは見えない何かにまた話しかけていた。
「え?なんだい、Leo。」
ロッジの中にもスーパーミュータントやナイトキン達がいる。
平和そのもの、といった風景だったが・・・1人だけ敵意をむき出しにしているナイトキンがいた。
マーカスにじろじろ見ないように言われていたので、Luciaはできる限り見ないようにしていたのだが・・・舌打ちした音が聞こえてくる。
ラウルを見ると、やれやれと言った表情だ。
助手にあれこれ指示を出している初老の男性がいる。彼がドクター・ヘンリーか。
『ドクター・ヘンリー?』
ふいに名を呼ばれて振り向くと、若い女性とグールと・・・サイバードッグ。何だこの組み合わせは。
「なんだ。何の用だ?」
『このこ・・・レックスの容態が悪いの。』
ちらりとレックスを見たドクター・ヘンリーは、新しい脳が必要だと言った。
『新しい・・・脳?』
「そうだ。今の脳は神経が劣化している。新しい物に取り換える必要があるんだよ。」
新しい犬の脳・・・。
そんなものどこで手に入るんだろうか。
「その辺をうろうろしている野犬というわけにはいかないだろう?何か心当たりはないのか?」
「ふむ・・・」
ドクター・ヘンリーは、ノヴァックの近くで暮らすギブソンばあさんが沢山の犬を飼っているし、リージョンやフィーンドは闘犬を飼っていることを教えてくれた。
『ギブソンばあさん・・・聞いたことがあるような』
あ、わかった。ロケットの部品を分けてもらったんだ。※Come Fly With Me
確かにあそこには犬が沢山いた。
でも・・・脳を貰うということは、だ。
Luciaが黙り込んだのを見て、ラウルがとりあえずギブソンばあさんとやらのところへ行ってみようとLuciaの背中をそっと押した。
「ボス、大丈夫かい?」
『うん、ラウルありがとう。』
見るとレックスも心配そうに頭を摺り寄せてきた。
『よし、レックス。ギブソンばあさんのところへ行ってみようか。』
見つめあうラウルとレックス