
俺の姿を見つけるとアストリッドは準備が整ったと言った。
美食家に扮してドール城へ潜り込み、皇帝の食事に毒を盛る・・・それが計画だ。
料理の仕上げに入れる様にと、ジャリンの根を手渡される。
一口食べるだけで、すぐに効果が出るそうだ。
毒殺ね・・・。
後ろにいたルシエンが、闇の一党に相応しい仕事だなと嫌味を言う。
アストリッドには聞こえていないようだ。
ジャリンの根を胸元にしまい込み、暗殺後はどうするのか確認をする。
一瞬、アストリッドが妙な表情をした。
暫く勿体ぶったように沈黙した後、暗殺後の説明をしだす。
警報が鳴り出したら、警備が手薄になるように手配した言うが・・・内部に協力者がいるということか。
・・・信頼に足る人物なのか確認をしたかったが、アストリッドは”聞こえし者”としての責務を果たせと言って背を向けてしまった。
仕方がない。ドール城へと向かおう。
皇帝の警備が何やらマロ指揮官の事を話していた。
息子を殺されて、家名も汚された・・・か。
やつらに気づかれないように、そっと辺りを窺う。
扉の前に帝国兵らしき人物が立ちはだかっているのが見えた。あれか。
※背中に矢を背負ったままだった・・・
早速料理人の服装に着替え、マロ指揮官に美食家の通行証を見せる。
通行証と俺の顔を見比べ中で料理人が待っていると言うと、マロ指揮官は再び警備に意識を向けた。
・・・こんなにあっさりと通されるとは、な。
料理場では、女が1人忙しそうに鍋をかき回したり野菜を刻んだりしている。
俺の姿を見つけると、邪魔だと言わんばかりに嫌な顔をした。
美食家の通行証を見せる。
女はジアーナと名乗り、非礼を詫びる。美食家と一緒に仕事ができて光栄だとも。
さて・・・美食家の代表作と言える”ポタージュ・ル・マグニフィーク”を作るとしよう。
味付けは・・・闇の一党風味だ。
最後にジャリンの根を加えて完成だ。
ジアーナはこれ以上手を加えることに難色を示したが、渋々といった体でジャリンの根をポタージュへ入れて煮込む。
さぁ、完成したポタージュ・ル・マグニフィークを振舞おうじゃないか。
ポタージュ・ル・マグニフィークの登場にはしゃぐ皇帝。
あれが、帝国の皇帝なのか・・・。
最初に味わう権利だのなんだのと言い、大喜びでポタージュを口にして彼岸へと旅立っていく皇帝陛下。
最後の晩餐がポタージュ・ル・マグニフィークだなんて、よかったじゃないか。
音を立ててスープ皿に突っ伏す。
招待客たちが一瞬何が起こったのか分からず、呆然と皇帝を見つめる。
ジアーナの悲鳴。
警備兵たちが、俺とジアーナ目掛けて切りかかってきた。
ジアーナは手にしていた鍋を警備兵に投げつけ、その場を逃げ出す。
招待客と警備兵をまとめて始末する。
しかし・・・警備が手薄になるように手配したとアストリッドは言っていたが、すぐに駆けつけてきたな。
兎に角、上の扉から外に出て橋を渡って逃げるとしようか。
橋の真ん中あたりまで進んだ時、マロ指揮官と警備兵たちが姿を現した。
その様子から味方ではないことが感じられる。どういうことだ。
マロ指揮官が俺を見て鼻で嗤った。
どうやら先ほど彼岸に旅立った皇帝は偽物ということらしい。
残念だったな、と笑いながらマロ指揮官が言う。
更に闇の一党のある人物と取引を行ったと話を続ける。
取引?
マロ指揮官の話から、アストリッドが俺を皇帝暗殺を企てた犯人として売ったということがわかった。
その代わり・・・闇の一党を存続させるように依頼したのだろう。
しかしマロ指揮官はアストリッドとの取引を反故にし、聖域を帝国兵たちに襲わせていると言うのだ。
・・・アストリッド。あのバカめ・・・。
問答無用で襲い掛かってくるマロ指揮官と警備兵。
こんなところで死ぬわけには行かないんでね。
片付けながら、逃亡ルートを探す。
階段は地下道へと続いている。
次々と現れる帝国兵たちを倒しながら、地下道を抜けるとソリチュードの裏手へと出ることができた。
用心の為に、草むらに身を潜め一息つく。
聖域を襲わせるとマロ指揮官は言っていた。
アストリッドがどうなろうと構いはしないが、礼の一言も言っておかねばな。
聖域へ戻るとしよう。
聖域に近づくにつれ、帝国兵の姿が増えてきた。
襲い掛かってくるので、返り討ちにする。
焦げた臭いが辺りに漂っている。
これは、火を放たれたか・・・。あの狭い聖域で火の手が上がると厄介だ。
Ladyには外で待つように指示し、聖域の中へと進んでいく。