Fallout4 Sub libertate quietem(7)
住宅地の家々は幸いなことにレイダーなどに荒らされることなく、残っている。
ガレージの中にあったパイプ椅子を持ち出し、焚火の近くに置く。
沸かした湯で茶を入れ、家の中にあったカップを失敬してプレストンへ渡す。
黙ったままカップを受け取り茶を啜ると、プレストンはほっと一息溜息をついた。
「大丈夫か?」
「・・・ああ。またレベッカに会えると、どこかで期待していたんだな、俺は。」
俺の視線に気づいたのか、また照れくさそうな顔をした。
レベッカは、クインシーの救援を受けて集められた隊員の一員で、プレストンの3つほど年下の女性だったという。
足の悪いスミス氏と年老いた婦人を気遣い、一緒にこの場所に残ったらしい。
「ダイヤモンドシティあたりに移動しているのならいいんだが。」
「そうだな。」
再び沈黙。
パチパチと木が爆ぜる音だけが聞こえてくる。
「火は良いな。見てると落ち着く。」
「確かに・・・久しぶりにリラックスしているような気がするよ、将軍。」
「プレストンは、俺に救われたと言うけど、俺も皆に救われているんだ。」
新しい薪をくべ、火の勢いを調整する。
プレストンは俺の言葉をじっと待っている。
「俺は、苦しさから逃げたくて、死に場所を探してヌカワールドまで行ったのに。」
ゲイジの最後の姿が目に浮かぶ。
「将軍」
焚火の火を見つめていた視線を俺に向け、有無を言わせない口調でプレストンが口を挟む。
「将軍。俺はアンタが傍にいてくれて幸せだ。」
「・・・ありがとう。ニックも同じようなことを言ってくれた。俺は・・・幸せ者だな。」
ヌカワールドでの出来事やファーハーバーでのDiMAとの話をプレストンに話して聞かせる。
「ニックの・・・兄弟・・・か。」
「オールド・ロングフェローや皆も元気にしているかな。今度一緒にファーハーバーへ行くか。」
チルドレン・オブ・アトムとの確執なんかも、どうなったのだろうか。
俺がいない間、居住地の運営はどうしていたのかと尋ねると、一瞬プレストンが口ごもった。
サンシャイン・タイディングスCo-opがスーパーミュータントに襲われた時、近くにいた傭兵に手助けを求めたらしい。
無事にスーパーミュータントを始末することができたが、傭兵が求める謝礼を払うことができない。
要求された金銭を全額支払うことができず、プレストンは一時的に傭兵に手を貸さざるを得なかったと眉間に皺を寄せたまま呟いた。
「あいつは本当に不愉快な奴だった。」
「手助けしてくれた傭兵のことか?」
険しい顔をして頷くプレストン。
どれだけの金額を要求されたのか。・・・まぁ、傭兵を頼るという事はそういうことなんだがな。
そいつは、あっという間にスーパーミュータントたちを蹴散らしてくれた。
しかし到底支払うことができそうにない金額を要求してくる。
挙句の果てには、蔑むような口調でミニッツメンを侮辱したとプレストンは吐き捨てる様に言う。
「侮辱された?」
「・・・連邦のミニッツメンとやらは、受けた恩の返し方を知らないのか、と。」
思い出すだけで怒りが湧いてくるらしく、プレストンは拳を握りしめる。
「・・・なるほど。で、結局どうしたんだ?」
「あいつが受けた任務の手助けをすることで、金はチャラにしてもらった。」
「財産をすべて売り払って作り出せと言われなかっただけ、よかったな。」
深く溜息をつく。
気が付くと、すっかり月が高い位置へと昇っている。
「プレストンの冒険譚は今度聞くことにしよう。そろそろ寝るか。」
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