Skyrim~Diyaab 黒き聖餐の依頼を引き受ける
“愛しの母、愛しの母、あなたの子供を私の元へ届けてください。
卑しい者の罪を血と恐怖をもって清めなければならないのです”
年のころは7~8歳くらいの少年が、何度もナイフを振り下ろす。
戸口に見知らぬ男が立っていることに気づいた少年は、顔を輝かせて立ち上がった。
どうやら俺を闇の一党だと思っているようだ。
少年の名前はアベンタス・アルティノ。
宿屋や衛兵が噂をしていた人物だ。
こんな子供が・・・?
何も言わずにいる俺に向かって、興奮した少年は口早にあれこれと捲し立てる。
母親が死んで、リフテンにある孤児院に送り込まれた。オナーホール孤児院。
そこの院長ぐグレロッドは本当にひどい奴だ。殺して欲しい!!
黒き聖餐まで行った少年に過去の自分を見たような気がして、気が付くと無言で頷いていた。
院長は少年だけでなく、孤児院にいる全ての子供たちに対して、酷い扱いをしていると少年は訴える。
二度とオナーホール孤児院には戻りたくないけど、友達には会いたいとぽつりと呟いた。
仕方がない。リフテンで一仕事するとしよう。
あれがオナーホール孤児院か。
振り向くとLadyが少し離れた場所から心配そうな眼差しで俺を見つめている。
孤児院の外で待っているように言うと、くうんと鼻を鳴らし入り口横にぺたりと座り込んだ。
ドアをそっと開け、中に滑り込む。
老女のがなり声。
そして、心のこもらない子供たちから老女への賛辞。
近くにいる若い女性は、手伝いかなにかか?
なるほど。なかなかの婆あのようだ。
孤児たちを見ていると、無気力そのものと言った子供やバレないように老女に向かって小さく舌を出したりしている。
アベンタス・アルティノが言うように、嫌われているということか。
夜、寝静まったころに片付けるとしよう。
広間に子供たちの寝場所があり、その奥にある部屋が老女の部屋。
渋々といった体で子供たちがベッドに入り、部屋の明かりが落とされたのを見計らって奥の部屋へと侵入する。
椅子に座ったまま船を漕いでいる老女に後ろから近寄り、叫び声が漏れないように口を塞ぎ喉を掻き切る。
何が起こったのかわからないまま、あの世へと旅立って行った。
テーブルに突っ伏す形で体を横たえ、俺は部屋を後にした。
入り口の扉に手を掛けた時、奥の部屋から歓声と女性の悲鳴が聞こえてきた。
どうやら子供たちが老女の死体を見つけたようだ。
子供たちはただただ喜びの声を上げ、若い女性が死体を見つけた恐怖に怯えている。
老女の死を悼む声は聞こえてこなかった。
アベンタス・アルティノの家に戻ると、少年は待ちきれないといった表情で駆け寄ってきた。
無事に始末したことを伝えると、孤児院にいた子供たちを同じように歓声を上げる。
暫く喜んでアレコレ叫んでいたが、お礼をしなきゃと言い出して何やらごそごそと探し物を始めた。
はい、と手渡されたのは大きな銀の皿。
とりあえず受け取ったが、正直こんな大きなものを貰っても困る。
少年が見ていない隙に棚へ戻しておいた。
闇の一党がなんらかの形で絡んでくるかと思っていたが、全く姿を現さなかった。
仕方がない。宿屋で一泊して、リフテンへ戻りブリニョルフの話を聞いてやるか・・・。
せめて闇の一党の仕事の噂なんかを耳にすることができれば良かったのだが。
宿屋キャンドルハースホールへ行き、遅い夕食を取り寝ることにしようか。
土の匂いがして目が覚めた。
焦点が定まらない。
昨日は・・・少年からの黒き聖餐の依頼を受けて老女を殺し、ウィンドヘルムの宿屋で食事を取って寝た・・・
頭の方は大丈夫そうだ。なにか・・・薬でも飲まされたのか?
固い地面に長い間寝転がされていたのか、節々が痛む。
ぼんやりとしていた視界が、徐々に元通りになっていく。
・・・棚の上に・・・誰かいる?
眉間に皺を寄せ、そちらの方を睨みつけると棚の上の人物が話かけてきた。