
プレストンは懐かしそうな、悲しそうな目でクインシーの街を眺めている。
「それで、どうするつもりなんだ?」
「そうだな・・・あんたと一緒にクインシーを見たかったんだ。それに・・・」
「それに?」
一瞬口ごもると、ふと顔を背けた。
入り口すぐのところにある教会を指さして、ここはスタージェスが工房として使っていたんだと教えてくれる。
俺たちの話声をききつけたガンナーが動き出した。
「プレストン。全部片づけるぞ。」
「もちろんだ、将軍。」
銃声を合図にして、離れた場所にいるガンナー達が騒ぎ出すのが聞こえてくる。
教会の屋根を歩き回る音がする。
上から攻撃されたら面倒だ。まずは上にいる奴らを片付けよう。
屋根へ出る階段を上がろうとしたところで、ひとりのガンナーと鉢合わせた。
プレストンが、あっと言ったのとほぼ同時に俺はそいつを撃ち殺していた。
駆け寄り死体を調べている後姿を見て、心臓を握りつぶされたような気持になった。
俺は、プレストンの知り合いを殺してしまったのか・・・。
「将軍。」
振り返ったプレストンは満面の笑顔だった。
「・・・?」
「間違いない。ベイカーだ。」
「誰だ?」
「こいつには・・・沢山の市民が殺された。本当に。」
知り合いを誤って殺したのではなかったようだ。思わずほっと吐息をついた。
よし。一掃してしまおう。
屋根の上からガンナー達を仕留めていると、足元に銃弾が撃ち込まれた。
辺りを見回しても、それらしき影が見えない。
プレストンは気づかずに、階下のタレットを片付けている。
どこにいる?
耳を澄まして探していると遠くで発砲する音は聞こえた。
半壊したハイウェイからこちらに向かって銃を構えるパワーアーマーが見えた。
あいつか。
互いに何発か応戦になる。
グシャ、と音がしてパワーアーマーが沈んだのが見えた。
「将軍!?大丈夫か?」
「ハイウェイから撃ちこんできてたやつを倒した。そっちはどうだ?」
「路地や家の中に隠れていた奴らは大体片付けたと思う。」
「ハイウェイにも潜んでいるかもしれんな。様子を見ておこう。」
屋根と屋根を繋ぐ渡しを通ってハイウェイへ。
町全体が屋根でつながっているようだ。
ガンナー達がつくったんだろうか?
街並みを眺める俺にプレストンが声をかけてきた。
「これは、ホリス大佐がスタージェスに命じてやったんだ。」
「ホリス大佐?」
「ああ、彼は・・・昔気質の人でな。ミニッツメンそのものだったよ。」
「そうか・・・。大佐はどうなったんだ?」
「クインシーの虐殺の中で戦死したよ。」
さっき倒したパワーアーマーのところへやってきた。
転げたヘルメットから覗く顔を見て、プレストンが眉根を寄せた。
元ミニッツメンで、孤立する彼らを見限りガンナーに寝返ったクリントだという。
何故、あの場面で裏切ったんだ、と足元に倒れるクリントに向かって呟いた。
じっと動かずにいるプレストンを残し、周囲を探る。
コンピューターに何か残されていないかと、起動してみると、ログが見つかった。
どうやらクリントが使っていたもののようだ。
ホリス大佐やプレストンのことが書かれている。
怪我をした女子供と共に反撃してくることはないだろうと、プレストンを評している。
キャプテン・ウェスという名前も書かれているが、これは誰なんだろう。
さっき殺したベイカーと話し込んでいるところをみると、ガンナーのボスか?
「将軍、今日はもう遅い。そろそろ休もう。」
「そうだな。その辺りにあるベッドを借りて寝るとするか。」
途中で立ち寄ったバンカーヒルで購入した食料と水をバックパックから出す。
ガンナー達が使っていたであろう焚火の周りに腰を下ろし、俺とプレストンは軽い食事を取ることにした。