がたん、と頭が何かにぶつかった痛みで目が覚めた。
一瞬自分がどこにいるのかわからずパニックを起こしかける。
薄目を開けて周りをみると・・・ストームクローク兵と共に馬車でどこかへ向かっているようだ。
両腕を縄で縛られているのがわかる。向かい側に座っている男も両腕を縛られている。
ストームクロークと共に捕まってしまったようだ。
再び目を瞑り、何が起こったのか焦る気持ちを抑えて考える。
そうだ、リフテンに向かおうとしていたところで・・・帝国兵に捕まったんだ。
折角ウィンドヘルムから逃げ出すことができたのに。
ストームクローク兵と馬泥棒と呼ばれる男が、騒いでいるのが聞こえてくる。
ちょっと静かにしてくれないかしらと思っていると、馬車が止まった。どこかへ着いたようだ。
ストームクローク兵はここはヘルゲンだという。ヘルゲン?いったいどこなの?
無理やり馬車から降ろされ、ストームクローク兵と共に処刑場へと連れて行かれる。
馬泥棒が溜まらず逃げ出した。
司令官の女が射殺す様に命令を出す。男が崩れ落ちて動かなくなったのを確認して処刑を始める様に部下に伝える。
折角シャービーや皆に手助けしてもらって、ウィンドヘルムから逃げ出したのに!
どうしてストームクローク兵と一緒に死ななきゃならないのよ!!
ilexは心の中で、ストームクロークも帝国兵も皆呪われてしまえと罵った。
処刑台に頭を横たえた時、遠くから咆哮が聞こえてきた。
ぞくっとした感覚が背中を走る。
これは・・・なに?
大きな羽ばたきの音と共に降り立ったのは、ドラゴン。
その赤い瞳を見た時、頭から尻尾の先へ電撃が走ったような気がした。
大きな咆哮と共に、ヘルゲンは大混乱に陥った。
この隙をついて逃げなくちゃ!
近くにいたストームクローク兵が声をかけてきた。馬車で一緒だった男だ。
とりあえず後について砦の中へと逃げ込む。
砦の最上階へと逃げようとした時、壁を突き破ってドラゴンが現れた。
ドラゴンの咆哮を耳にしたとき、またしても尻尾まで貫く感覚が走った。
心臓がどきどきしている。
恐怖?それとも・・・?
ドラゴンが開けた穴から外へと逃げ出すことに成功すると、今度は帝国兵が戦っている場面に遭遇した。
リストがどうのと言っていた男だ。思わず睨みつける。
しかし一人でこの場面を逃げ出すことはできそうにないので、ilexは渋々男の後を着いて行くことにする。
見上げるとドラゴンの姿が。
ilexは、自分がうっとりとその姿に見惚れていることに気が付いた。
ハドバルと名乗る帝国兵に腕の縄を斬ってもらい、自由に動けるようになった。
その辺りの箱に入っていた鎧を身に着け、武器を手にする。
とはいえ、今まで剣なんて扱ったことはない。
ダガーを手にしたものの・・・戦闘はハドバルに任せることにしよう。
砦から洞窟へ、ストームクローク兵と戦いながら進んで行く。
その間にハドバルがダガーの扱い方や弓の射方を教えてくれた。
ハドバル:あんた・・・なんでストームクロークと一緒につかまった?
ilex:・・・。ウィンドヘルムからリフテンに行こうとして、道に迷ったのよ
ハドバル:ストームクロークとは全く関係ないということか?
ilex:そういうことは、処刑前にきいてくれないかしら
そりゃそうだな、すまん。とハドバルは呟いた。
悪い男ではないらしい。
洞窟を抜けると、ドラゴンが遠くへと飛び立っていく姿が見えた。
なんとも・・・名残惜しい。
ilexがドラゴンの姿を見つめているのに気が付いたハドバルは、もう大丈夫だろうと笑いかけてきた。
心配しているわけではないのだが、あえて否定せずにおく。
ハドバルがリバーウッドに知り合いがいるから、休ませてもらおうと言う。
そういえばお腹が空いた。
ハドバルの後を走りながら、ilexは考える。
ドラゴンに・・・また会えるかしら。
リバーウッドでハドバルのおじアルヴォアに、ホワイトランの首長にヘルゲンでの出来事を伝えてきて欲しいと懇願された。
面倒くさいなと一瞬考えたが、もしかするとまたドラゴンに会えるかもしれないと思いつき、二つ返事で了承する。
ハドバルはアルヴォアの娘ドルテに質問攻めにあっている。
疲れきったilexは、早々にベッドへと潜り込ませてもらった。
翌朝、ホワイトランへの道筋を確認しているilexにハドバルが付き合ってやるよと言い出した。
しばらくこの辺りをぶらついて、騒ぎが収まったころにソリチュードへ戻ると言う。
ハドバル:まぁ、こんな騒ぎに巻き込んじまったお詫びと思ってくれ
ilex:そうね。私はこの辺りに不案内だし、助かるわ
ハドバル:では行くとするか