マーキュリオと2人、ウィンドスタッド邸からソリチュードやドラゴンズブリッジ等を回ったりドゥーマーの遺跡に潜ったりして楽しい旅を続けている。
Jadeの破壊魔法スキルもかなり上達してきたので、一度ウィンターホールドへ戻ろうかという話になった。
大学に戻るのは本当に久しぶりだ。
マーキュリオがウィンターホールド大学へ行った後、リフテンに行こうと言う。
この間、ウィンドスタッド邸でアミュレットをプレゼントされた時もリフテンへ行こうと言っていた。リフテンになにかあるのだろうか?
雪山を越えて、あと少しでウィンターホールド大学というところまでやってきた。
久しぶりのウィンターホールドで嬉しくなったJadeは少しはしゃいでいた。
「おい、気を付けろよ。」
「あ、あっちに大学が見える!」
と、高台に上がって遠くを眺めた瞬間。足を滑らせた。
あっという間の出来事で、構えることも庇うこともできず、真っ逆さまに落ちて行った。
幸いなことに落ちた先は深い雪の上。気づくと雪の中に埋まりこんでいた。
しばらくの間気を失っていたのか、体がすっかり冷え切っている。
雪の中から這いずり出て、怪我がないか確認する。骨折や大きな怪我はないようだ。
顔や手に所々擦り傷があるくらい。運が良かった。
遠くからマーキュリオが名前を呼んでいるのが聞こえてきた。
マーキュリオの声が聞こえると、ほっとしたのかJadeは少し涙ぐんだ。
「このバカ!!ケガはないか!?」Jadeの姿を見つけるとマーキュリオは走り寄って、大きな怪我がないか確認する。
「・・・ごめん、マーキュリオ。骨折とか怪我はしてないみたい。」へへへと笑う。
「本当に・・・心配したぞ。」
そう言うと、マーキュリオは冷え切ったJadeの体を抱きしめた。
大丈夫だよ、と言おうと顔を上げるとマーキュリオが唇を重ねてきた。Jadeの背中に回した腕に、ぐっと力が入るのを感じる。
Jadeもそっとマーキュリオの背中に腕を回す。
マーキュリオが、ふと我に返り体を離す。顔を背けて「すまん」と小声で呟いた。
ウィンターホールド大学にたどり着くまで、たどり着いてからもマーキュリオは話しかけても上の空のようで、返事も「ああ」や「うむ」しか言わない。
この間の事を後悔しているのだろうか?そう思うとJadeは胸が締め付けられた。悲しくてやりきれない。
学友を誰か誘ってウィンターホールドの町で飲み明かしたい気分だ。
ブレリナには実験があるからと断られ、ジェイ・ザルゴには酒は飲まないと断られたJadeは、オンマンドを半ば脅すような形で飲みに誘い、フローズン・ハースへとやってきた。
「もう・・・なんだよ。」オンマンドは渋々Jadeに付き合ってエールを飲んでいる。
黙り込んで飲み続けているJadeの首に、見慣れないアミュレットが下げられていることに気づいた。
「Jade、それ。そのアミュレット、どうした?」
「・・・ん?これ?マーキュリオがくれたの。」
よく見ると、マーラのアミュレットだ。マーラのアミュレットをマーキュリオに貰ったと言うことは・・・これは。
「なんだよ、お前ら。そういうことかよ。」惚気話でも聞かされるのかと思うと、ちょっとうんざりした。
しかし、どうもJadeの様子を見ていると・・・そういう話がしたいのではないようだ。
マーキュリオのバカ・・・とぶつぶつ言っている。
Jadeは、マーキュリオが何かのはずみで、この間のようなこと(抱きしめたりしたこと)をしてしまったけど、それを後悔しているから口をきいてくれないんだ、と悲しそうに呟いた。
「お前、マーラのアミュレット受け取っておいて、一体何を」
「なに?このアミュレットがなんなの???」・・・酔ってきたJadeは話をまともに聞きやしない。
まさかな、とオンマンドは思った。まさかJadeはマーラのアミュレットに込められた意味をわかっていないんじゃ?だからと言ってオンマンドが、その意味を教えるのはどうなんだろうか?それは・・・俺の役目じゃないな。
気づくとJadeは涙をこぼしながら、酔いつぶれていた。
「おいおい!!こんなところで寝るなよ!」揺すってみたが、むにゃむにゃ言うだけで起き上がろうとしない。なんということだ。
Jadeを担ぎ、アークメイジ居住区まで何とか運んできたオンマンドは、入り口でマーキュリオが仁王立ちしているのに気づいた。ちょっと待ってくれよ。俺、何も悪いことしてないぞ。
「・・・どういうことだ。」
「それを俺に言うなよ。聞いて欲しいことがあるからってJadeに誘われたんだよ。」
マーキュリオはオンマンドから奪うようにしてJadeを抱き上げた。
そのまま立ち去ろうとしたオンマンドだったが、マーキュリオに一言いいたくなった。
「マーキュリオ。」
「・・・なんだ。」
「式には呼んでくれよ。大学の皆でお祝いに行くよ。」
一瞬意味を飲み込めなかったマーキュリオだったが、すぐに耳まで赤くなった。
「お、おい。それは、どういう」
「とはいえ、Jadeは・・・よくわかってないみたいだけど。・・・がんばれよ。」
ぼんやりした頭にマーキュリオの声が聞こえてきた。あれ?オンマンドと飲んでいたはずなんだけどな。
「おい、水を飲め。まったく・・・こんなに飲むなんて、どうしたんだ。」
素直にマーキュリオからコップを受け取ると、こくりと飲み干した。
「だって・・・」と呟くと、ほろりと涙が零れ落ちた。
Jadeが泣いていることに気づいたマーキュリオは涙を優しく拭いながら、頬を撫でる。じっと見つめた後、優しく口付けた。
「・・・どうして?」
「ん?」
「・・・この間から、ちゃんと話してくれないのに、なんでまたkissするの?」
マーキュリオは一瞬言葉に詰まり、Jadeの首筋に顔を埋めて唸り声をあげた。ぎゅっと体を抱きしめる。
「くそっ」
Jadeの頭がマーキュリオの肩にもたれかかってきた。ふわりとJadeの香りが漂う。
「・・・言わなきゃ、わからんのか」
「・・・。」
「・・・?おい?」
聞き耳を立てると、規則正しい寝息が聞こえてきた。マーキュリオに抱きしめられて安心したのか、Jadeは酔いが回って眠りに落ちてしまっていた。
マーキュリオはほっとしたような、残念なような複雑な気持ちでJadeをベッドまで運んでやった。
「困ったお嬢さんだ。」
「いつになったら・・・わかってくれるんだ?」髪を撫でつけ、毛布をかけてやりアークメイジ居住区を後にする。
できる限り早くリフテンへ行こうと心に決めるマーキュリオであった。
「きみがいるだけで」終
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